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食べる絹
~衣料素材から体にやさしい機能性蛋白質へ~

 柔らかくて温かく、軽くて美しい絹は、数千年前から高級衣料素材として世界中で利用されてきましたが、最近では絹が本来持っている抗菌性,吸湿性,放湿性,保温性,紫外線カット,静電気防止等の機能に注目が集まり、健康衣料品として再評価されるとともに、他の分野においても絹の新規利用が模索されつつあります。

 絹は、均質で人体との親和性が高く、繊維,粉末,溶液,多孔質体,膜等多くの材料形態が得られることから、衣料以外への新たな用途として、水質浄化資材,青果物等の鮮度保持材,脱臭資材,化粧品,シャンプー,リンス,入浴剤,洗顔剤,バイオセンサー,生分解釣糸,抗血液凝固剤,人工皮膚,コンタクトレンズ,食品素材などがあります。

 特に「着る」ものであった絹を「食べる」というと意外に思われるかもしれませんが、すでに機能性食品素材としてシルクパウダーが配合された、うどん,そば,豆腐,飴,ゼリー,アイスクリーム,ヨーグルト,ケーキ,せんべい等が販売されています。

 絹糸は、フィブロインとセリシンという二種類の蛋白質で構成されており、二本のフィブロインの周りをセリシンが覆って一本の糸状になっています。食品素材としてのシルクパウダーは主としてフィブロインをいろいろな方法で粉末状にしたもので、表に示したように人間の必須アミノ酸八種類の他にも多くのアミノ酸を含んでいます。特に多く含まれているグリシン,セリン,アラニン,チロシンの生理作用には機能性が認められており、グリシンとセリンは血中コレステロール値や血糖値を下げる働きがあり、アラニンはアルコールの代謝を促進して肝臓の負担を軽減させ、チロシンは脳の神経伝達物質の材料となります。このような機能性食品素材としての効果については今後の研究に託される部分もありますが、従来ファッションとしての衣料素材であった絹が、健康衣料品や食品素材として人の健康や生活に役立つ機能性蛋白質として再評価されようとしています。

             絹(フィブロイン)のアミノ酸組成

アミノ酸 重量 % アミノ酸 重量 %
グリシン 35.5 グルタミン酸 1.6
アラニン 27.7 アルギニン 1.0
ロイシン 0.7 シスチン 0.5
イソロイシン 0.9 メチオニン 0.2
バリン 2.7 リジン 0.5
フェニルアラニン 1.2 プロリン 0.4
スレオニン 1.1 トリプトファン 0.4
アスパラギン酸 1.8 チロシン 10.0


1999年10月

奈良県農業試験場
茶業分場  総括研究員 福森茂樹