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ビニールハウスの暖房について

 冬の店頭に並ぶトマトやキュウリを見ても皆さんは、違和感を感じませんね。しかし、戦前ではそれは夢物語でした。施設(ビニールハウスやガラス温室による)栽培が普及し、暖房をおこなうことで初めて可能となったのです。15℃以下では生育が鈍り、5℃以下では生育が停止するトマトやナスなどの野菜は、冬に栽培するのに暖房が不可欠です。現代の食生活は、ビニールハウス(以下ハウスと略す)やガラス温室の暖房に負っているところが極めて大きいのです。真冬でも風の無い晴れた日の日中に、密閉されたハウスに入ると、暖房無しでも30℃近くまで上がり、暑いくらいなので、暖房の経費もさほどかからないかと思われる方もいると思いますが、夜間にはかなり温度が下がるものなのです。

 ハウス内の熱は、1)地中への伝導 2)ビニールフィルム(以下フィルムと略)の継ぎ目や窓の周辺から抜ける 3)フィルムを通過する(熱輻射)ことで逃げてしまいます。ハウス内の熱の損失はおおよそ、1)で0~30%、2)で10~20%、3)で60~90% と、フィルムを通過するものがほとんどです。フィルムからの熱の損失は、住宅の壁のおよそ10倍にもなります。しかも外界と接する表面積が大きいため、非常に冷えやすい空間といえます。もし暖房がなければ、昼間にハウス内に蓄えられた暖かい空気は日没とともに急速に失われ、明け方には屋外と変わらぬほどにまで下がります。そのため、冬場のハウスの暖房はかなりのエネルギー消費を伴うものです。例えば、奈良県平坦部において11月から4月までハウス内の最低温度を12℃以上に設定しようと思えば10aあたり15000リットルもの石油を消費することになります。

 石油連盟の調査によると、一般家庭の一冬の灯油の平均消費量は200~300リットルですから、いかに多く消費するかおわかりでしょう。ほとんどのハウスでは、冬期には内側にさらに一重、場合によっては、二重にフィルムを被覆するなどで30~40%のエネルギーの節約を図っています。さらに資源・環境問題への意識が高まる現在では、化石燃料に頼らない自然の熱エネルギーを活用した新しい暖房方法の実用化が模索されています。


1999年11月
奈良県農業試験場
主任研究員 滝 憲治