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遺伝子組換え農作物が商品になるまでの道のり

 科学技術が発達した現代、品質や耐病性などに影響する遺伝子を入れた遺伝子組換え野菜や穀物などが作られるようになってきました。これら遺伝子組換え農作物は、開発後どのような過程で店先に並ぶのでしょうか。

 実験室で作られた遺伝子組換え農作物は、すぐに商品として売り出されるわけではありません。何段階にもわたって安全性を調べ、現在の科学的知見から安全であると確認できたものだけが商品になります。安全性の評価は大きく分けて、環境に対する評価と食品・飼料としての評価があります。

 環境に対する安全性評価は、実験段階(閉鎖系・非閉鎖系温室)の評価を文部科学省の指針の通り行った後、産業利用段階(隔離圃場)の安全性評価を農林水産省の指針によって行います。
評価項目は
(1)用いる元の植物の性質
(2)導入に使うDNAの由来生物や機能、塩基配列などの情報
(3)遺伝子導入用の運び屋DNA(ベクタープラスミド)の性質
(4)組換えDNA分子の作成・導入法
(5)導入遺伝子の細胞内での状態
(6)元の植物と組換えた植物との違い   などです。

実際に評価するのは(6)についてで、それ以外は組換え体を作成する段階であらかじめ調べています。(6)については具体的に、形態、生育、生殖・繁殖に関する特性、雑草性、有害物質生産性、土壌微生物などへの影響について調査し、組換え植物に導入した遺伝子による変化以外の予想外の変化が起きていないか調べます。この結果、新しく作った組換え植物の環境に与える影響が元の植物を越えなければ、従来の方法で作った品種と同様に栽培しても問題がないと判断されます。

 食品・飼料としての安全性評価は、厚生労働省(食品)と農林水産省(飼料)によって定められた指針によって行います。食品の安全性評価は「導入された遺伝子の特性が良くわかっていて、元の食品と実質的に同程度に無害であるという科学的な確信がある場合、その組換え作物は元の作物と安全性は同じである」という“実質的同等性”が基本的な考え方です。評価項目は環境に対する安全性評価とほぼ同様で、異なる項目は(1)アレルギー誘発性(2)人工胃液・腸液による消化性や既知のアレルゲンとの相同性、予想摂取量など(3)代謝経路への影響などの毒性(4)主な栄養素や有害物質の分析などがあり、元の食品と同じ程度に安全であると判断されれば、食品として利用できます。開発者がこれらの安全性評価を行い、関係する国の機関はデータの信頼性も含めて、適切な評価が行われたか審査します。そして、昔からの方法で開発された農作物と同じ程度に安全であることが認められると、晴れて商品として売り出すことができるのです。

2001年4月
奈良県農業技術センター
生産技術担当 資源開発チーム 研究員 都築正男