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風と作物

 涼しい風が恋しい季節になりました。屋外の涼しい風、木枯らし、被害をもたらす暴風など、風は私たちの生活に密接に関わっています。ところで、作物にとって、風はどのような意味があるのでしょうか。

1.植物は無風を好まない?
 植物は光合成を行いますが、その際、葉っぱの裏側に多くある、気孔と呼ばれる空気の出入り口から、炭酸ガスを取りいれて酸素を放出します。風がまったく吹かなくなると、気孔のごく近くは、放出された酸素がたまる一方で、光合成に必要な炭酸ガスが不足し、生育に悪影響が出てしまいます。
 さらに、1.葉面が乾きにくく、そのために病気が発生しやすい、2.夏季には日射による熱を冷ますことができず、体温が上昇しすぎる、3.放射冷却の影響が強くなり、春先など霜害を受けやすい、4.花粉、種、花の香りが飛ばないために、交配や繁殖がうまくできないなど、風はさまざまな役割を担っています。

2.扇風機で農業生産
 風のない温室内で行う花や野菜の生産では、生育促進や病害回避のために、扇風機で空気を動かす方法が取り入れられています。キュウリの実験例では、風速毎秒0.5mの風を起こすことによって、無風に比べ2倍以上も光合成量が増加したとの報告もあります。
 屋外で栽培される果樹や茶の畑の場合は、気温が低下したときに柱の上に取り付けられた扇風機(防霜ファン)を作動させて空気をかくはんし、霜の害を防ぐ方法がとられます。

3.植物は強風を好まない!
 暴風で作物が被害が受けるのはもちろんのことですが、そうでなくても、風が一定以上の強さになると、光合成が阻害されてしまいます。これは、植物の葉面には必要な炭酸ガスは十分に供給されるけれども、気孔からの水蒸気の放出(蒸散)が多くなりすぎて、しおれ状態になってしまうからです。

4.風とともに
 防風林や防風垣によって、果樹園などの作物を強風から守る工夫は、古くから行われており、最近では防風ネットも多く利用されています。
 茂りすぎた作物の風通しを良くするために、間引きや剪定をしたり、風で倒れないように土を株元に寄せるなど、人々は風を意識して作物の栽培を行ってきました。風から作物を守りつつ風を生かす知恵は、新しい技術も伴って、今も農業生産に貢献しています。

イラスト.「風と作物」
1 無風だと生育悪く、病気がち。
2 そよ風くらいが一番快適。
3 風も強すぎるとしおれ気味。
4 暴風には耐えられない。

2001年7月
奈良県農業技術センター
普及技術課 専門技術員 黒住 徹
        
                      「風と作物」

1 無風だと生育悪く、病気がち
2 そよ風くらいが一番快適
3 風も強すぎるとしおれ気味

4 暴風には耐えられない