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遺伝子組換え食品

 日本では今年の4月から遺伝子組換え食品の表示が義務化され、消費者の遺伝子組換え食品に対する関心が高まってきています。消費者にとって遺伝子組換え食品はマイナスイメージが強いようですが、将来直面するであろう食糧危機を考えると、遺伝子組換えは重要な技術であると考えられます。

 「遺伝子」について2つの大きな誤解をしている消費者が多いのではないでしょうか。一つ目は、今まで遺伝子を食べたことが無いと思っていることです。毎日食卓にのぼる野菜や肉や魚の細胞の中には、必ず遺伝子が含まれていて、我々は毎日遺伝子を食べているのです。二つ目は、多くの方が遺伝子を生き物だと思っていることです。遺伝子は細胞の核の中にあるDNA(化学物質)の一部にすぎないのです。すなわち、DNAの中で、遺伝のための役割を果たしているものだけを遺伝子と呼んでいるのです。

 遺伝子組換え技術とは、ある生物が持っている有用な遺伝子を、他の生物に組み入れて新たな性質を加える技術なのです。この技術を用いて作られた作物が5年ほど前から日本にも輸入されています。4月からスタートした遺伝子組換え食品の表示制度は、大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、ワタとこれらを原料とする24品目の加工食品について、「遺伝子組換え」と「遺伝子組換え不分別」の表示を義務づけるものです。ただし、同じ大豆製品でも豆腐や味噌は表示しなければならないのに対して、醤油やサラダ油は表示が義務づけられていません。醤油やサラダ油は、製品になる工程でDNAやタンパク質が分解されて遺伝子を確認できないからです。実際スーパーマーケットでは、任意表示である「遺伝子組換え作物不使用」表示が目立ちます。これはメーカー側が、遺伝子組換え作物は日本の消費者にはまだ受け入れられないから、原料に遺伝子組換え作物を用いず、商品を差別化して売ろうとする戦略のようにも思えます。あくまでも、表示は消費者に購買時における選択の権利を与えるものであり、食品そのものの安全性を示すものではないことを知っていただきたいと思います。ちなみに、現在出回っている遺伝子組換え食品は安全性が確認されたものです。

 アレルギー性がない医薬的な遺伝子組換え食品のように、消費者に大きなメリットがある遺伝子組換え食品が市場に出回れば、従来の安全性を確認した遺伝子組換え食品も今以上に受け入れられると考えられます。
2001年10月
奈良県農業技術センター
資源開発チーム 総括研究員 浅尾浩史