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植物のゲノムプロジェクト

 近頃のニュースや新聞などに時々“ゲノムプロジェクト”という言葉が登場します。植物でも幾つかの研究プロジェクトが進行中です。この“ゲノムプロジェクト”というのはいったい何でしょうか。そして何に役立つのでしょうか。

 生物の細胞の核にある染色体は、DNAという物質ですが、ヌクレオチドといわれる小さな物質が数珠つなぎになってできています。
 ヌクレオチドには塩基という部品が1つあり、塩基には4種類あります。DNA中で4種類の塩基の順番(配列)には意味があり、私たちの体を作るタンパク質や酵素を作る部分(遺伝子)や、遺伝子が働く時期や場所を制御する部分などの情報となっています。

 ゲノムプロジェクトはある生物の遺伝子を含むDNA全体の塩基配列を解析し、さらに遺伝子の数、遺伝子の働きやその相互関係、いつ、どこの細胞で働くのかなど、遺伝子全体の挙動から生命機能を解明するプロジェクトです。 一口に、ある生物のDNAの塩基配列を全て解読すると言っても、労力や費用、時間はかなりかかり、一つの生物の全DNAの塩基配列を決定するのに数年を要します。また、より正確なデータを得るために、同じ所を10回以上繰り返して、主にDNAシークェンサーという機械やコンピューターを何台も使って解読します。

 そこで、最新の技術を取り入れながら、幾つかの国や研究機関が協力して解析を行うことが多いのです。植物では、日本も参加したアブラナ科のシロイヌナズナの全塩基配列が決定されています。また、イネの全塩基配列の決定は日本が中心になって行っており、近い将来には完成する予定です。その他マメ科のミヤコグサなどでゲノム解析が開始され、トウモロコシなどでも検討されています。

 ゲノムプロジェクトは果たして何の役に立つのでしょうか。生命システム(進化や発生、機能など)を理解するのに大きな役割を果たすのはもちろんですが、ゲノム塩基配列は公開され、自由に利用できるため、様々なメリットがあります。人や動物では医薬品の開発や家畜の改良などに役立つでしょう。植物では、農作物の品質や収量などに影響を及ぼす遺伝子を見つけるのに利用され、遺伝子組換え技術などの分子育種、交雑、突然変異などの手法による農作物の改良に威力を発揮します。また種類が違う植物でも、同じ機能の遺伝子は似た配列であることが多く、他の種類の農作物でも品種の改良に利用でき、いろんな農作物の改良に役立つでしょう。

2001年4月
奈良県農業技術センター
生産技術担当 資源開発チーム 研究員 都築正男