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自然はやさしい?

「自然」と言う言葉に対し、どのようなイメージを持たれますか。「やさしさ」「心のやすらぎ」、人が作った化学物質に比べ「安心」。けれども本当に自然はやさしく、自然のものは安全なのでしょうか。

皆さんは毒を持っている生き物が身近にいることを知っているでしょう。山や草むらにいるマムシやムカデ、海に行けばフグやクラゲなどです。そして植物もまた毒性の物質を体内に持っているのです。植物は昆虫や動物から逃げることはできません。だから食べられないよう,ほとんどの野生植物は毒物質で身を守っているのです。毒キノコやトリカブトが有名ですが、青い梅の種(青酸)・ジャガイモの芽(ソラニン)など、私達が口にする作物にもたくさんあります。また植物は病気にかかると、病原菌の増殖をおさえるために、ファイトアレキシンと言う抗菌性の物質を作り出します。この物質は動物に対しても毒性があります。一方カビの中には、マイコトキシンという毒物質を作り出すものがあります。お米や麦やトウモロコシ・ピーナッツに、ある種のカビが生えると極めて強い毒性の物質が生産されます。

人類はずっと毒に囲まれながら生きてきたと言えるでしょう。だからこの毒から逃れるために、長い時間をかけて、有害な野生植物から害の少ないものを選び出しました。これが現在栽培されている農作物、穀物や野菜や果樹です。また人間は酒・醤油・味噌・パンなど有用な微生物を利用して、食生活を豊かにしてきました。タバコのニコチン、コーヒーのカフェインも毒物質ですが、人間は上手に利用しています。植物の毒を利用して,奈良公園では生垣に鹿が食べることができないアシビ(馬酔木)が植えられ,田んぼの畦にはネズミやモグラに穴を開けられないようヒガンバナ(彼岸花)が植えられているのです。自然はそのままではやさしくありません。危険なものです。自然をうまく利用してはじめて、自然は人間にやさしくなるのです。

2001年9月
奈良県農業技術センター
環境保全担当 病害防除チーム 総括研究員 堀本圭一