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新しい農業形態を考える

明治以来、農村(農業)から都市(他産業)への人口流出が続いてきました。不況が進み完全失業率が5%を越える今こそ、逆に優秀な人材を農業に呼び戻し、新しい農業を築く絶好の機会と考えられないでしょうか。

 農業も他産業と同じように「人」、「資金」が必要で、さらに「土地」が非常に大切な要素になります。現在、全国的に就農者が減少して高齢化が進み、耕作されない農地が目立つようになってきていますが、農家でさえもままならない農地の権利移動がネックとなり、他産業から人を受け入れるのは非常に難しい状況です。

 そこで、専業農家割合の低い地域において、他産業から人と資金を集めて信頼できる法人(自治体・農協・企業が出資して設立)を立ち上げ、これに農家も農地を出資し、代わりに農地債券(仮称)を受け取ります。つまり農地を耕作権と資産に分離し、前者を法人に、後者を土地保有者に分けます。可能なら農業者も法人に参加してもらい、後輩を教育して農業をやります。土地を売るようなやっかいなことはさけ、農地を手放す必要が生じた場合、農地債券を債券市場にて販売し、農地はそのまま法人が継続的に利用できるようにします。債券には満期を設定し、長いものほど農地提供者にメリットが保証されるようにし、満期時には条件見直しも行います。

 農地法の改正により条件付きながら株式会社も農業生産法人になれ、関連事業への拡大も認められるようになってきています。法人設立により農村に安定した雇用の場ができ、資金が流れ込みます。土地出資者には農地管理、子弟や転職者には就農時のリスク軽減と収入を得ながらの職業訓練というメリットがあり、地域の農業後継者ができます。安定した活気のある組織には優秀な人材が集まります。問題は法人が資金を回収でき、経営が継続できるかどうかです。優れた経営管理の下、面積拡大により高い生産性を達成し、関連事業、販売や加工にも適した人材を振り分け、農外に流出していた利益を確保できるようにすれば、地域の頼もしい産業になるのではないでしょうか。暗い時代だからこそ、しょうがないとあきらめずに新しい農業を考えていきたいものです。
2001年11月
奈良県農業技術センター
研究企画課 研究企画係 総括研究員 渡辺寛之