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大和の新郷土料理

 新しい年を迎えて、早いものでもう1月も終わろうとしていますが、皆様の新年は、いかがでしたか。

 新春のテレビを見ていたとき、出演者達がふるさとの味のお国自慢を競い合って、まるで子供のように話している番組を、微笑ましく見ました。雑煮ひとつとっても、地域によって具の種類や、餅は丸か、角か、また焼くのか焼かないのか、味噌味か醤油味かと、多種多様で、日本の食文化の奥深さを大いに感じたものでした。

 さて、奈良県の雑煮はどんな特徴があるのでしょうか。大和の雑煮には、きなこがつくのです。他府県の人は面食らうかもしれませんが、味噌仕立ての雑煮の餅を取り出して、きなこをつけて「あべかわ餅」のように食べるのが、大和風です。これが甘辛の調和したなかなかおつな味なのです。

 なかでも、びっくりする雑煮は山添村の「頭芋の雑煮」です。焼いた餅と両手にあまるほどの頭芋(ヤツガシラ)、ニンジン、ダイコン、豆腐、コンニャクを大振りのお椀に山のように盛り、味噌仕立てでいただきます。人の頭になるようにと頭芋、豆腐は白壁の蔵、コンニャクは土蔵の象徴で、蔵が建つようにと四角く切ります。丸く一年が過ごせるようにと、餅は丸餅に、ダイコン、ニンジンは輪切りにします。きなこの黄色は、米の豊作を願っています。大和のお雑煮は、ひとつのお椀の中に家族の健康と子孫繁栄の祈りを込めた、全国に誇れる食文化のひとつです。

 このように、大和には農耕社会に根付いた庶民の暮らしの中に、しっかりと息づいている食文化があります。慌ただしい現代生活の中で、忘れられつつある大和の郷土料理を紹介したいと農業技術センターで「ごっつおの達人」(県内農家女性8名)の協力をいただいて、冊子「大和の新郷土料理」を作成しました。内容は、各月ごとの行事と料理(26種類)の作り方、そこに込められた願いや謂われなどと、四季折々のおいしい大和の地場野菜ガイドを旬の味としてまとめました。

 ご存じのように、食事には「ハレ」と「ケ」があります。正月や盆、祭りの時の餅や棒だらなどがハレの食事であり、平常の食事をケと言います。しかし今、古老達が「今日は毎日、祭りみたいでこわいようや」と言うのは、ケの日でも毎日のようにかつてのハレの食事をとっていることをおそれた言葉です。感覚のずれと言えばそれまでですが、ハレとケの差がなくなりつつあるのはまちがいのないことです。でもそれは、本当に私たちの食事が豊かになったといえるのでしょうか。

 今の食事を昔にもどそうというのではなく、普段の暮らしのなかでふと、大和の味を懐かしく思ったときに、この冊子を参考に新しい郷土料理を作っていただければと思います。
 
2002年1月
奈良県農業技術センター 普及技術課 専門技術員 角山美穂

冊子「大和の新郷土料理」