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一目で味がわかる非破壊分析の秘密
~近赤外分析法~

 果物の美味しさを知るには、実際に食べてみるのが一番です。販売店では、陳列棚の前で試食コーナーを設けたりもします。ただ、果物にはいわゆる「当たりはずれ」があり、中にはそれほど美味しくもないものが混じっていたりすることもままあります。販売する前に全ての果実の味がチェックできれば・・・。そんな夢のような話が、近年急速に発達したセンサーやコンピューターの技術によって現実になりつつあります。それが、赤外線を利用する「近赤外分析」です。

 赤外線は、1800年頃、天王星の発見などで有名なイギリスの天文学者、ウィリアム・ハーシェルによって発見された、波長約780nm(ナノメートル:1ナノメートルは十億分の1メートル)以上の目に見えない光線のことです。こたつやストーブで体が温まったり、地球温暖化が問題になったりするのは、暖房器具や太陽からの赤外線のエネルギーが、体内の水分子や大気中の炭酸ガス等に吸収されて熱になるからです。

 ところで赤外線は、糖やアミノ酸など水以外のいろいろな物質の分子に吸収されます。しかも、この吸収は例えば水が1940nmというように、物質ごとにある特定の波長が強く吸収される性質を持ちます。近赤外分析はこの性質を利用し、およそ800nmから2500nmの間の赤外線ー近赤外線ーで味を構成する物質の量を測定するものです(図)。

 農業分野では1960年代から主に穀物を対象に研究が進められ、現在は穀類やサトウキビの品質検査の他、桃、ミカンなどの果物で実用化されています。分析スピードも年々アップし、ベルトコンベヤを流れる果実を、大きさや色、形だけでなく、甘さなどの美味しさで選別できる機械や、果実が樹になったままで計測できるコンパクトな機械が開発されています。当たりはずれがあって当たり前だった農業生産の世界も、今や外観と内容も含めた品質保証が可能な産業へと変身しつつあるのです。
2002.6
奈良県農業技術センター
果樹振興センター 主任研究員 濱崎貞弘