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農地の洪水防止能力

 いよいよ本格的な台風シーズンの到来です。九月は、梅雨の時期に次いで降水量の多い月であり、秋の長雨と重なると、大雨による水害が気になるところです。

 水防のための様々な施設・設備の整備も行われていますが、短時間でも排水能力を超えた大雨が降ると、浸水の被害が出てしまいます。都市化や耕作放棄が進行すると、洪水時のピーク流量を増大させることも立証されています。つまり、流域に農地や森林があると、一時的に雨水が蓄えられ、洪水防止・軽減に大きな役割を果たしていることになります。
 それでは、奈良県にある農地が持つ貯水力とは、どのくらいの量になるのか、計算してみましょう。県内には水田が一億七千五百万平方mあり、畦が堤防となって大雨時には平均で深さ十五センチメートルの水をせき止めると仮定すると、その貯水量は二千六百二十五万立方mとなります。

 一方、畑は、土壌中の間隙に雨水を一時的に貯留させることで機能を発揮します。県内には畑が六千七百十万平方mあり、作土層二十センチメートルの深さに保持される水の量が約十九%であるとして計算してみましょう。その貯水量は二百五十五万立方mとなります。
 これら農地の貯水量を合わせると二千八百八十万立方mとなり、津風呂ダム(二千四百六十万立方m)や大迫ダム(二千六百七十万立方m)の貯水容量に匹敵する量の水を一時的に蓄えることができます。
 ただし、こうした農地の持つ洪水防止機能は、農地を耕作する人たちがいて、農地を維持管理してこそ発揮されるもので、農業の営みが個人的な活動に留まらず、公益的な役割をも担っていることを、我々は認識しなければなりません。

                       水を貯える機能を持つ水田
2002.9
奈良県農業技術センター 
研究企画課 経営情報係 主任研究員 平岡美紀