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安全・快適・効率的な作業環境作り

-作物にあわせて体を曲げる、腕を伸ばすから体に合わせた作業環境へ-


 春のフルーツを代表するイチゴの季節がやってきました。「あすかルビー」や「とよのか」、「章姫」といった品種名で店頭に並んだイチゴは、それぞれに形や、味で個性を競っています。

 さて、このイチゴが栽培されているビニルハウスの中をちょっとご案内しましょう。扉を開けると暖かいハウスの中は、イチゴの甘い香りがいっぱいです。大きなハウスでは、イチゴを植えた畝の長さが50m以上もあります。この畝の間を通って、真っ赤に色づいたイチゴを1つ1つ丁寧に摘んでいくのです。

 皆さんは、イチゴ摘みに行ったことがありますか。イチゴ園の中のおいしいイチゴをおなかいっぱいに食べて、おみやげのイチゴを箱一杯に摘んだ頃には、ずっと屈み続けた腰がとても痛くなっていることに気がつくでしょう。そうなのですイチゴ摘みは、腰が痛いのです。当然の事だったわけですが、水田の畝に植えられたイチゴ栽培の作業は、ほとんどが、屈み作業なのです。

 このように農作業は、作物の状況に合わせて、屈んだり、つま先だって腕を伸ばしたり、斜面やでこぼこの畑で脚立に昇ってするなどのなどの作業がたくさんあります。

 写真のイチゴのほ場は最近各地で取り組まれている「高設栽培」です。パイプを組み合わせて作ったベンチにイチゴを植えてあります。作業する人が屈まなくても良い高さに設置できます。従来の畝による栽培方法よりは、設置費用はかかりますが、作業の快適性から取り組む農家が増えてきています。快適性は、効率的な作業環境とも結びついています。
このことから、出荷規模の大きい農家や、若い農業者の評価は高く、パートなどの雇用環境が良くなるなどで評価されてきています。

 このような作業環境の改善は、色々なところで取り組まれています。奈良県を代表する柿栽培では、高い柿の木の管理作業や、収穫作業を安全に、快適に行うために樹高を低くし斜面での脚立での作業を少なくして効率的に作業でき、しかも高品質な果実を生産する技術を検討しています。特に高齢の方や女性の方々にとって、安全に快適に作業できる環境が大切であることが認識されてきています。

 健康を優先して働くことは、一見非効率的に思えるかもしれませんが、疲労をためて働くことは、作業効率の低下やけが、事故の原因につながります。また、作業のしにくさが農業という産業の不人気の一要因となっていることに気づけば、必ずしも非効率的ではないといえます。

2003.3
奈良県農業技術センター
専門技術員 新田美幸