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熱を利用した作物病害の防除

 21世紀は「環境の世紀」と言われ,あらゆる産業で「人と環境にやさいし」や「リサイクル」をキーワードに,製品や技術の開発が進められています。農業分野も例外ではなく,減農薬や無農薬栽培のほか,自然環境に影響の少ない化学合成農薬、天敵製剤やフェロモン剤などの生物農薬の開発・普及が進んでいます。作物の病害防除部門では,特に蒸気,熱水(熱湯),温湯(50~60℃),乾熱(乾燥条件下),太陽熱(過湿条件下)などの熱を利用した土壌伝染性や種子伝染性の病害防除技術の研究開発および普及が積極的に進められています。

 具体的な処理方法としては,蒸気や熱水は,主に土壌や育苗用土の消毒に利用され,土の温度を60℃以上に上げて20~30分間処理します。温湯は主に種子消毒やセルトレイ等の資材の消毒に利用されます。種子消毒では50~60℃程度の温湯に種子を10~30分間浸漬し、資材の消毒では,60℃以上で20~30分間浸漬します。乾熱は主にウイルスや細菌に対する種子消毒に利用され,70~80℃の高温で2日~数週間処理します。種子を温湯や乾熱で処理する場合には,処理温度と時間との組合せが作物と対象病害によって異なり,処理を誤ると種子が発芽しなくなるので注意が必要です。また,施設栽培での太陽熱を利用した土壌消毒は,1970年代に当センターにおいて開発された技術であり,夏場圃場に水を入れた後、20~30日間施設を密閉して土壌を熱処理するものです。この方法は、特別な処理機械が不要でコストもかからないことから,近年の環境保全ブームによって見直され,適用される作物および栽培様式が西日本を中心に拡大しています。

 現在,当センターでは,イチゴの育苗管理作業の省力化を目的として導入が進んでいるベンチ育苗でのオガクズ培地の再利用のため,施設内での春期(5~6月)および秋期(9~10月)の太陽熱を利用したイチゴの重要病害である萎黄病の防除対策の研究を行っています。今後ますます熱を利用した作物病害の防除技術の開発や普及に拍車がかかるものと思われます。
施設オガクズベンチ育苗での太陽熱処理状況
2003.4
奈良県農業技術センター
環境保全担当 病害防除チーム 主任研究員 西崎仁博