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熱を利用した土壌消毒

 ビニールハウスや畑で何作も同じ野菜を何回も続けて栽培すると、病原菌が土の中で増えて病気が多発するようになります。この被害を避けるため、土壌消毒が必要になります。これまでは土壌くん蒸剤という農薬が使われていましたが、最もよく使われていた臭化メチルがオゾン層を破壊する性質があり、2005年以降は使用が禁止されることになりました。また、無農薬野菜を求める消費者ニーズや環境への影響の少ない生産技術の要請を背景に、できるだけ農薬を使わない農業技術の開発が求められています。そこで、農薬ではなく、熱による土壌消毒が注目されています。

 熱を利用した土壌消毒には蒸気消毒や太陽熱利用法、熱水土壌消毒法などがあります。

 蒸気消毒は加圧して100℃以上に温度を上げた蒸気を土の中に送り続けて土の温度を80℃以上に上げる方法です。地床栽培では効果が不十分なことがあり、メロンの隔離床や育苗用土の消毒に利用されています。

 太陽熱利用法はビニールハウスを密閉して土壌を45℃前後の比較的低い温度を長期間(14~20日)持続させて消毒します。この技術は奈良県農業技術センターで開発され、促成イチゴ栽培の必須技術として定着しました。古ビニールを使って処理できるので低コストですが、処理適期が夏期に限定されるのが難点です。

 熱水土壌消毒は最近実用化された技術です。ボイラーで作り出した熱水を土壌の表面に並べた散水ホースから散布して浸透させ、土の温度を上げて殺菌します。熱水は一平方メートルあたり150~200リットル散布します。この方法は高い防除効果があり除草効果も期待できますが、多量の水を使うため透水性の悪い土壌では処理が難しいのが欠点です。

 熱による殺菌は、微生物実験では古くから高圧滅菌器が使われ、120℃の蒸気で三十分間加熱して培地や器具を滅菌します。しかし、高温処理による土壌消毒では土中の有効菌が死滅し、、再汚染した場合にはかえって発病が多くなり、低温(60℃程度)で消毒する方が望ましいとされています。

 私たちが関心を寄せている技術の一つにマイクロ波加熱があります。この加熱法は土壌中の水分が発熱し、水を過剰に加える必要がありません。家庭では電子レンジとして利用され、プラスチックの接着や食品の殺菌など広汎に利用されている技術ですが、農業用にはほとんど使われていません。土壌を加熱したときに温度が不均一になることが欠点でしたが、保温資材を利用することで解決の目途がつき、低温消毒の実用化に向けて研究中です。

2003.5

奈良県農業技術センター
統括主任研究員 岡山健夫