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食の安全を守る~リスク・アナリシス~

 我々は日々安全でありたいと願います。でも、酸素でさえ中毒を起こすことがありますし、セレンなどの必須微量栄要素は、取り過ぎると逆に毒になります。空気も水も有機農産物も、我々を取り巻くありとあらゆる物が皆何らかの危険性を兼ね備えているのです。

 だからと言って怯える必要はありません。要は相手の素性をよく理解して上手に付き合えばよいのです。その考え方の一つに、リスクアナリシスというものがあります。

 これまで食品の安全対策は、問題が生じない限りは安全と見なし、何か問題が生じてから対策を取る、という、後始末を重視する危機管理が中心でした。一方、「安全と証明されない限りそれは安全ではない」と言う前提に基づき、予防を重視する方が効率的でより確実に安全を確保できるという考え方が、1980年代以降欧米で出てきました。これが、リスクアナリシスです。

 リスクアナリシスでは、まず人に害を及ぼしかねない可能性を持つもの、例えば毒物や食中毒菌などの状況を調べ、その危険度や影響の大きさを評価して、対策を検討します。従って、重要なことはまずどのような危険が考えられるのかを、科学的に調査することです。次に、その評価に基づき、何をどうするかを決定し、実施します。この時最終決断を下すのは政治の仕事になりますが、その過程で関係する全ての人々が協議し、どうするのかを慎重に考慮しなければなりません。このような場合、絶対100%の安全はあり得ず、限りなく完璧を求めると途方もない経済的・社会的負担が要求されます。そこで、皆が許容できる範囲で、対策を求めなくてはならないのです。そしてその関係者の中には、専門家はもちろんみなさんのような消費者も含まれています。なぜなら、食の安全は生産から消費に至る全ての過程で安全性を確保しないと必ずどこかで破綻を来すものであり、最終出口である消費者のみなさんも、単に安全を享受する立場ではなく、安全確保の一翼を担う大事な一員であるからです。

 こんな言い方をしますと、中には「責任転嫁」と取られる方もいるやもしれませんが、決してそうではありません。「食」にまつわる正しい知識を共有し、相互の信頼を培いながら安全と安心を高めていこうという考え方なのです。そのためにも、みなさんには是非この「緑のミニ百科」等を通じてより「賢い消費者」を目指していただくと共に、我々専門家も、もっとみなさんに理解していただけるように情報を伝達する努力が必要でしょう。その要となる機関の一つに、奈良県には「農業情報・相談センター」があります。食や農に関する疑問や関心にお答えする窓口として活動していますので、是非ご利用いただきますようお願い申し上げます。

2003.5
奈良県農業技術センター
農業情報・相談センター 
主任研究員 濱崎貞弘