注意 過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。

里山・里池の復権を

 都会に住む人々にとって、「緑」は年々縁遠いものになってきています。一方、中山間地域などでは、過疎化が進んで鎮守の杜をはじめ田んぼや畑までがクズや竹に覆われているところもあります。

 人間は、自然を利用して生活圏を作り上げてきました。自然の方も、私たちの生活の営みとの関わりから、人間と共生できる植物の生育する場所が中間帯にできあがってきました。

 この部分が山際や丘陵地ですと「里山」となりますし、奈良盆地のような平場には生活に密着した「ため池」があり、これを囲む堤や水路全体が「里池」となります。

 このような場所では、草刈りや水路補修が毎年定期的に繰り返され、草花もそういう環境に適したものが茂るようになってきます。これの代表的なものとしては、ササユリ、オグルマ、オカトラノオ、アサザ、ススキ、リンドウ、ナデシコなど私たちが身近で親しんでいる花達が名を連ねています。

 話は変わりますが、みなさんは「茶花」と言う言葉をご存知でしょうか。

 飲むお茶の木の花ではなくて、お茶会の席を飾る花のことです。この時の花は、まさしく先に述べたような里の野山に咲くものを使うことが原則になっています。つまり茶会の時には非日常の豪華な花ではなく、身近な野の花を飾って、さりげなく「わび・さび」の季節感溢れる日常が演出されています。これは、日本人と自然との細やかな交流から生まれた、素晴らしい習俗と言えるでしょう。

 今、生活習慣が変化して里山や里池は、かつてのような生活に密着した場としての機能が低下し、荒れ始めてきているところも見受けられます。このような場所を復元し、地域興しのポイントにしたり、教育の場に活用しようとする試みがなされ始めました。いろいろなところでNPO組織も立ち上がり、シンポジューム等も多数企画されています。

 もう一度、自然との関わりについて考えてみませんか。案外、身近なところに我々の感性を豊かにしてくれるものが、まだまだあるのではないでしょうか。
里山・里池を彩ってくれるカワラナデシコ
カワラナデシコは、初夏から秋まで長期にわたって見られる代表的な山野草です。
日本女性の美しさを代表する「大和撫子」の言葉にも取り入れられているように、里山・里池(堤)を彩ってくれるきれいな花です。

2003.6
奈良県農業技術センター
普及技術課  副主幹  寺田孝重