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人と鳥との戦いの話し 

 9月も後半、実りの季節を迎えようとしています。田んぼでは「へのへのもへじ」のかかしが黄金色に垂れた稲穂を見守っている...というのが、カレンダーや絵葉書などでよく使われる典型的「実りの秋」イメージの一つです。それほど、かかしが日本の農村イメージとして定着しているということは、言い換えれば日本の農業において、鳥害対策がいかに昔から身近に行われてきたか、ということの現れと言えるでしょう。

 他の野生動物による農業被害が最近になって顕在化しているのに対して、鳥類による被害は昔からずっと発生し続けています。農林水産省の統計資料によると、毎年全国で10~20万ヘクタールもの農地が被害を受けています。ただし、その内情は近年変化を見せています。20年ほど前まではスズメによる被害が一番大きかったのですが、最近はカラスによる被害がとって代わっています。平成12年のデータによると、カラスの被害面積はスズメの約1.5倍に達し、さらに、高価なくだもの類に特に大きな被害を与えるので、被害を金額に換算するとスズメの約3倍にも達しています。

 そんな状況に人々は手をこまねいていたわけではなく、昔から様々な対策が練られてきました。冒頭のかかしはその代表例で、もともと魚の頭などを焼いたものを田畑に置き、においを「嗅がし」て鳥獣を追い払ったのが由来のようです。最近では、安価なものとしては目玉模様の風船、反射板、反射テープなどが、やや高価なものではタカなどの天敵の模型、プロパンガスを利用した爆音機、鳥が窮地に陥った時に出す鳴き声(ディストレスコール)を再生する機械、などが開発されています。しかし、それらを用いて鳥害を完全に回避できるかというと、現状ではかなり厳しいようです。なぜなら、いくら驚かしても鳥はいつか「慣れて」しまうのです。さらに最近は頭の良いカラスによる被害が主となっているため、少々の仕掛けでは1週間もしないうちに見破られてしまいます。結局、田畑を網で覆ってしまうのが現在のところ確実な唯一の方法なのですが、それでは費用や労力が大きくなりすぎ、現実的ではありません。当センターでは、様々な方法を組み合わせた、総合的鳥害対策の開発に取り組んでいますので、今後の成果にご期待頂きたいと思います。
   上段:かけ袋ごと被害を受けた柿 
   下段:地面に置いた柿に寄ってきたカラス
2003.9
奈良県農業技術センター
果樹振興センター 作物保護チーム技師 米田健一