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植物の組織から苗を増殖

 ご存じのとおり植物でも動物でも生物の体は多くの細胞からできています。ひとつひとつの細胞は葉や茎や根などの器官に分化できる能力を持ち、細胞分裂で増殖しながら、それぞれの役割を担うようになります。細胞の中には遺伝情報の入った核があり、どの細胞も全ての遺伝情報を持っているのですが、分化することによってその細胞ごとに必要な情報のみが働き、他の情報は休止するようになります。この分化した細胞を組織培養技術を使うことで再び分化していない状態の細胞に戻し、さらにそこから新しく植物を作ることができます。

 この組織培養技術についてお話ししましょう。まず、植物の生育に必要な養分や生育を調節する植物ホルモンなどを含んだ寒天培地を高温高圧で滅菌して作ります。次に、クリーンベンチという無菌の作業台の上で、培地に洗浄殺菌した植物の葉や茎などを小さく切ってのせます。これを、温度や光条件を保った培養室内に置きます。しばらくすると切り口からカルス(分化していない細胞の塊)ができ、そこから芽が出てきたり、不定胚(種子の中にあり植物の元になる胚のような組織)ができたりします。この芽や不定胚を新しい培地に植えかえながら育てると、元の植物と同じクローン植物ができます。また、カルスや不定胚を液体の培地の中で振とうさせながら培養すると大量に増殖することができます。植物や組織の種類によって方法や培地の種類は異なり、全ての植物で成功しているわけではありませんが、この方法を用いれば多くの均一な苗が得られます。

 そのため、通常の増殖方法では増やしにくい植物や、種子を播いても形状が揃わない植物の増殖などに用いられています。例えば、シクラメンは冬を彩る代表的な鉢花ですが、種子を播いて育てても花の色や形状にばらつきがあるという問題があるため、一部で組織培養技術を用いた苗が販売されています。揃いが良ければ農家の方々も安心して栽培できるし、購入するお客様方も品質の良いものを手に入れられるのです。あなたのお部屋を彩るきれいな花々も実は組織培養技術を利用してできたものかも。
2004.1
奈良県農業技術センター
資源開発チーム 主任研究員  岡田恵子