注意 過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。

コケを育てよう

 コケは地球上で約4億年前に地上に上がった初めての植物です。その頃の大気組成は現在と大きく異なり、温暖化の原因とされている二酸化炭素濃度が今の20倍もありました。植物による二酸化炭素の取り込みを考えた場合、能力の高い植物は他にあるのですが、いずれも寿命が短く、枯れてしまった後に燃やされたりして二酸化炭素が大気中に戻ってしまいます。長期的な視点で考えると、コケは寿命が長く二酸化炭素を体内に蓄積していくので、最も二酸化炭素濃度低減に役立つ植物といえます。
 コケは植物学的には蘚苔類とされ、スギゴケを代表とする蘚類とゼニゴケを代表とする苔類とツノ状の葉を伸ばすツノゴケ類の3つに分けることができます。種類は、世界中で2万4千種、日本では2千5百種ほどが確認されています。体の仕組みは他の草木などの植物とは少し異なり、いわゆる根の機能をする部分がありません。仮根というものはありますが、それは地中に向かって伸長せず、水分や養分も吸収しないで、役目はコケの体を地面等に引っ付けて支持することだけです。葉にあたる部分で水分の吸収から光合成まで全てを行っています。
 このコケが今、緑化植物として注目されています。日陰でじめじめとしたイメージがあるのですが、明るいところを好むものや乾燥に耐えることができる種類もあります。緑化資材として注目されているのは、主にスナゴケとハイゴケの2種で、屋上や壁面への省力的な管理が可能な資材として利用方法が検討されています。
 知らないうちに勝手に生えてしまうコケですが、いざ育てようとすると案外難しいものです。種類ごとに好適条件はそれぞれ異なりますが、基本的にはやはり水分が必要です。しかし、水はけの良いところに育ち、風は空中湿度を下げたり葉上の水滴を蒸発させてしまうので嫌います。水分の主な補給は朝方の露に頼っているので、これが長い時間あるほど有効に活用でき、風があまり通らないように壁や石などを配置する工夫が必要です。種子ではなく胞子で子孫を残していきますが、人工的に増やす場合は葉を細かくちぎって砂などに密着させる栄養繁殖法が良いでしょう。
 さあ、あなたの庭やベランダでコケを育てて地球環境の改善に貢献してみませんか。コケを見ていると自分への癒しにもなりますよ。



コケ時計、中央は花壇を配置 (農業技術センター内) 

2004年4月
産業科学振興室
産業科学振興グループ調整員  西野精二
(元 農業技術センター 研究企画課 総括研究員)