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バイオテクノロジーを活用した様々な育種技術

従来、植物の新しい品種を作り出す育種は、自然に発生する突然変異や枝変わりで良いものを見つけたり、花粉をめしべにつけて交配させて、できた種子をまいて選抜したりする方法がとられてきました。しかし、突然変異や枝変わりは自然任せであり、交配では遺伝的に近い植物同士しか種子ができず、育種に限界がありました。近年、バイオテクノロジーの発達により今まで以上に幅広い育種が可能となってきましたので、紹介します。

1.胚(はい)培養
 交配で種子ができない組み合わせの中には、植物の基になる組織(胚)はできているのに途中で生育が止まってしまう場合があります。胚培養は、生育が止まる前の胚を取り出して、人工的に培養することで植物にまで生育させる方法です。遺伝的にさらに遠くなる植物同士では胚もできないのでこの方法は使用できませんが、胚培養により、交配育種の範囲が広がりました。
 今までこの方法で育成された品種としてはハクサイとキャベツ(別名;カンラン)をかけ合わせたハクランが有名です。他に、柑橘やユリなどで多くの新品種があります。

2.細胞融合
 交配しても胚ができない植物同士の場合でも、細胞壁を取り除いた裸の細胞(プロトプラスト)にすると、結合できる場合があります。この方法が細胞融合です。
 この方法によって育成された植物には、ジャガイモ(ポテト)とトマトをかけ合わせたポマトや奈良県農業技術センターで育成したナスの台木品種「ナクロス」があります。

3.新しい育種技術
 胚培養や細胞融合では、いずれも組み合わせる植物に限界がありますが、遺伝子組換え技術を用いると全く異なる植物の性質でも取り入れることができます。植物へ遺伝子導入する方法には細菌を遺伝子の運び屋として利用するアグロバクテリウム法や機械的に遺伝子を打ち込むパーティクルガン法があります。遺伝子組換えでは、目的とする遺伝子だけを入れることができるので、選抜の労力が省けるというメリットがあります。ただし、花粉の飛散の影響調査や食品としての安全性の試験などを時間をかけて行う必要があります。最近、この技術により、青いバラが育成されています。

 このように、様々な育種方法が開発され、今までにできなかった品種育成や多くの時間と労力を必要とした品種改良を効率的に進めることができるようになりました。当技術センターではシクラメン等花き類でこれらの技術を活用して新品種育成に取り組んでいます。

ハクサイとキャベツより胚培養でハクランが育成されます
農林水産省農林水産技術会議事務局  くらしのなかのバイオテクノロジーより
2004年8月
奈良県農業技術センター 
資源開発チーム 主任研究員 岡田 恵子