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園芸福祉のススメ

「園芸テ(セ)ラピー」とか「園芸療法」と言う言葉は、マスコミにも取り上げられ、だいぶんお馴染みになってきましたが、「園芸福祉」や「福祉的園芸」となりますと、まだまだ聞き慣れない言葉であろうと思われます。
「テ(セ)ラピー」と言う言葉は、本来病を癒す方法を意味しています。ですから、これらは医師の指導(処置)の下で、療法士と呼ばれる有資格者が治療を行うことを意味していて、園芸を取り入れた療法は日本では作業療法士が扱っています。
したがって、園芸を活用して、全ての社会的弱者に対して社会復帰の手助けをしようと言うことや、地域のコミュニケーションの潤滑油に植物を利用すること、老人など地域的弱者に対するケアマネージメントに応用することなどは、狭い意味の園芸療法からはみ出していますから、園芸療法という言葉を使うと混乱が生じます。
 そこで、この様な広い意味での園芸を通した社会活動の場合、園芸福祉または福祉的園芸と呼ばれるようになってきたのです。2001年には「第一回園芸福祉全国大会」が開催され、その後も各府県を巡って開催が続いていますから、この言葉が独り立ちを始めたと言えるでしょう。

 園芸と言いますのは、植木鉢一個、プランター一つから始められるのが長所ですので、このような広い社会活動にうってつけの手法と考えられます。さらに、園芸と人間関係に習熟したボランティアの養成ができれば、この活動に幅が広がり、求心力が生まれてきますので、これに向けた取り組みが待たれるところです。
また、最近の事例には、里山の復活を色々な階層(小学生から高齢者まで)の方々の参加で行っているケースやビオトープ作りを地域ぐるみで行うことなどがあります。この場合、対象植物は山の植生であったり、水生植物全体となってきますから、園芸植物に限られていた従来の園芸福祉とは様相が違っています。しかし、高齢者、社会的弱者も仲間に入って里山復活やビオトープ作りに取り組むことは、人と人との心のつながりをはぐくむと言う意味において、大切な園芸福祉の分野であると思われます。
 ですから、もし皆さんが植物とのつきあいを通して地域コミュニケーションの輪を広げる活動をしておられるとすれば、それは期せずして園芸福祉を「ススメ」ていると言えるでしょう。
園芸福祉ボランティア研修の風景(大泉緑地)
写真 園芸福祉ボランティア研修の風景(大泉緑地にて)  
2004年9月
奈良県農業技術センター
普及技術課 専門技術員 寺田孝重