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農業分野におけるオゾンの利用

“オゾン”と言えばほとんどの方が聞いたことがある言葉でしょう。オゾン層破壊やオゾンホールといった言葉は、代表的な環境破壊の例として新聞やテレビでもよく耳にします。オゾン層は地上約10~50km上空の成層圏にあって地球を取りまいており、地上に紫外線が降り注ぐのを防ぐ役割をしています。このように、オゾンは地球上で生物が生きていく上で欠かせないものなのです。
 しかし、オゾンははるか空高いところにあって、私たちにはお目にかかることができないものと思う方も多いでしょう。確かにオゾンは無色の気体なので目には見えないのですが、その特徴ある臭いでオゾンの存在を確認することができるのです。たとえば、ひと昔前のコピー機のそばいると独特の生臭い臭いを経験した人もいるかもしれません。最近ではマイナスイオンドライヤーでオゾンも同時に発生する商品があるので、オゾンの臭いを経験している方も多いのではないでしょうか。近年このオゾンの利用がさまざまな分野で進んでいます。先に挙げた家電製品以外にも、病院では病室の病原細菌の消毒や熱処理ができない医療器具などの殺菌に利用されています。また、ホテルや駅などでは部屋やトイレの脱臭にも使われています。実際の利用場面ではオゾンは分解しやすく容器などに保存できないため、専用のオゾン発生器が使われています。
 それでは、オゾンにはどのような性質があるのでしょうか。オゾンは酸素原子が3つくっ付いた分子(O3)ですが、その性質は酸素(O2)とは全く異なり、空気中ではとても不安定ですぐに分解します。このとき強い酸化作用が起こり、殺菌、脱臭、漂白といった効果が生まれるのです。
 農業分野でもオゾンの殺菌力を利用する試みが行われています。例えば、土を使わない水耕栽培では水耕液を介して病原菌が蔓延し、作物を枯らして大被害を受けるしことがあります。このような病害発生を防ぐために、水耕液をオゾンで処理し、病原菌を死滅させて被害を抑えることができます。また、オゾンは種子に付着した植物病原菌の殺菌にも有効です。オゾンは分解が早いため殺菌効果は持続しないという欠点がありますが、これは逆に言うと作物に長く残留することがなく、ヒトや環境にやさしい殺菌法と言えます。農業分野ではオゾンの利用は始まったばかりで、実用化研究が進められており、今後さらに応用場面が増えてくるでしょう。

写真 オゾンガス発生装置
2005年4月
農業技術センター
環境保全担当 病害防除チーム
主任研究員 平山喜彦