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クズの話

 クズはマメ科の多年草で、日本には西南諸島を除き、一種のみ自生しています。春になると、枯れずに冬を越したつる(茎)の節や株元から芽を出します。しかし、芽が動き出すのは遅く、四月下旬の八重桜が咲くころで、五月に入り芽が少し伸びて目立つようになります(写真)。梅雨のころから急激につるを伸ばし、七月下旬から八月上旬ごろ最も盛んになります。多いもので日に十センチ程度も伸び、あたりを覆いつくします。十月に入ると伸びが止まり、十一月以後、葉が黄色く枯れてきます。つるも先から枯れてきますが、ある条件のところ(太さ、根を出した節など)で止まり、冬を越す多年生茎になります。

 秋の七草であるクズは八月下旬から九月にかけて房状でよい香りのする赤紫の花を咲かせます。そのあと、いわゆるマメのさやになり、その中に種子ができます。そのほとんどはさやのまま落ちるようですが、何年かクズが育っているところでは、ほとんど種子からの発芽はありません。種子がどのように運ばれるかまだよくわかっていないようですが、林の中の木が切られたあとや、道などを造るため土を削ったり盛られた、日当たりのよい所に種子が芽を出すようです。また親株から伸びたつるが地面に着いた節から根を出し、何かの原因でつるが切れると一つの若い株となって増えていきます。

 クズは万葉集によく詠まれ、枕草子にも「葛の風にふきかえされて裏のいと白く見ゆるをかし」とあり、古くから親しまれてきた植物です。 クズという名前は吉野の国栖(クズ)(現在の吉野町大字新子)の人が根からとったデンプンを都で売ったことに由来すると言われています。 これが吉野クズで有名なクズ粉です。クズ餅、クズきり、クズあん、クズそうめんなどに利用されてきました。また、根を切って天日乾燥した葛根(カッコン)はかぜ薬に使われてきました。手軽なところでは若葉を炒め物や天ぷらにしたり、花をゆでて三杯酢で食べられるようです。
 つるはかごなどの民具や、内皮からとった繊維を「葛布」として利用しました。これは丈夫で防水性があり、江戸時代には、はかまや雨具に使われました。
 つるや葉は、たい肥として、また、タンパク質が多く含まれることから飼料として栽培利用が試みられたこともあります。アメリカに渡り砂防用植物として利用されたこともあります。

 かつては色々利用され、身近な植物として親しまれてきたクズも、生育の速さと量、そして何にでもからみつき害を与えるやっかいな雑草になっています。しかし、最近、人の健康によいとされる種々の成分が多く含まれていると注目されています。再び現代の清少納言に取り上げられる日がくるかも知れません。 
2005年5月
高原農業振興センター
総括研究員 浅野 亨