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農作物と光(ひかり)害

  光(ひかり)害という言葉をご存じでしょうか?環境省の光害対策ガイドラインでは、光害とは「良好な照明環境の形成が、漏れ光によって阻害されている状況又はそれによる悪影響」と定義されています。簡単には、照明が、目的とされる対象以外に照らされたり、必要以上に明るく照らされることにより、周辺の環境、人、動植物などの生育に影響を与えること、と言えます。
 農業の生産現場でも、夜間の照明により農作物の生育に影響が出る事例があります。特に、都市近郊の農業地域では、農地に隣接する道路の照明灯や夜間営業の店舗の増加により被害が発生しやすい状況にあります。

 では、具体的にどのような影響が出るのでしょうか。代表的な例として、水稲やホウレンソウへの影響を紹介しましょう。
 水稲は、日長が短くなることに感応して花芽を作る短日植物です。そのため、夜間にある程度の照度以上の光が当てられ続けると、花芽の形成や出穂が遅れてしまいます。そして、収穫時期になっても、十分に成熟せず、収量、品質が低下してしまうことがあります。
 また、ホウレンソウは、水稲とは逆に長日植物といって、日が長くなることにより花芽の伸長が促進されます。そのため、夜間照明により、花芽の伸長、抽苔(茎の伸長)、開花が起こり、商品とならなくなってしまいます。
 対策としては、できるだけ照明灯の光が圃場に漏れないよう照明の位置や角度を変えてみることや、栽培品種を影響の受けにくいものにするなどがあります。しかし、照明は元々ある目的のために設置されていますし、また、栽培品種も気象条件、市場性の点なども考慮しなければならず、完全な解決策とはなりえません。

 現在、農業技術センターでは県内の民間企業と共同で水稲への影響を抑えた照明灯の開発に取り組んでいます。照明としての機能を維持しつつ作物にも安全で、生育や花芽の形成に悪影響を及ぼさない光の開発を目指しています。

2005年8月
農業技術センター
作物栽培チーム 主任研究員 杉山高世