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植物の♂と♀

野に咲く花や、町の街路樹、お皿の中の野菜達。私たちの周りには沢山の植物がありますが、今回はそんな植物の性についてのお話です。
 植物の世界では、性について自殖性植物と他殖性植物という分け方をすることがあります。自殖性の植物は自分の雄しべの花粉が自分の雌しべについて、受精をする植物のことです。自殖性植物にはイネや豆類等があります。イネは午前中に花が咲きますが、花が開いた頃にはもう自分の雄しべと雌しべの間で受粉を完了していて、他の花粉が受粉しにくいような仕組みになっています。 一方、他殖性植物は自分以外の仲間の間で受精が行われる植物のことです。冬に一層おいしいホウレンソウに雄株と雌株があることをご存じでしょうか。イチョウにも雄の木と雌の木があります。このように人間と同じように男と女があるような植物を雌雄異株の植物といいます。雄株と雌株があることで、自分以外のものと交配できることになります。この他に、キウイフルーツも雄株と雌株があり、実をつけるためには受粉が必要なので、雄株と雌株を一緒に植えなければなりません。アスパラガスも雄株と雌株があり、雌株は赤い実を付け、その分栄養が使われるので、雄株の方が収量が多いとされています。またビールに入っているホップも雄株と雌株があり、雌株にできる毬花(まりばな)が使われるので育種する時以外には雄株は必要とされていません。
 春になると川岸や道路の脇に菜の花が咲き誇ります。この菜の花は他殖性植物で、このタイプの植物にとってはできるだけ他の仲間と交配する方が都合がいいのですが、菜の花はコメや豆類等と同じように一つの花に雌しべと雄しべがあります。したがって、構造上これらは自分自身の雄しべと雌しべで受粉する可能性があります。そこで菜の花のような植物は自分の雄しべからできる花粉と自分の雌しべを見分けられるように、S遺伝子というものでそれぞれ区別しています。S遺伝子は色々なタイプがあるのですが、同じタイプのS遺伝子を持つ雌しべと花粉では、花粉が雌しべについても受精しにくくなるような仕組みを備えています。キャベツ、ブロッコリー、ハクサイ等も同じような仕組みがあり、育種する際、よい系統同士を効率的に交配するためにこの性質が利用されています。菜の花以外に果樹のリンゴやナシ、サクランボ等も自分と自分以外とを見分ける能力をもっているものがあります。果樹は接ぎ木といって、いわいるクローンで増やしていますので、違う木であっても品種が同じであれば、自分自身を掛け合わせていることになります。したがって同じ品種であればうまく受精できませんので、他の品種を植える必要があります。
 このように私達に身近な植物の性には様々なタイプがあり、植物を利用する側の私達もそれぞれの植物の性の特性に応じた扱い方を行っています。

2006年2月
奈良県農業技術センター
高原農業振興センター 営農技術チーム 技師 北條雅也