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野生鳥獣による農業被害(獣害について)

 「稲刈り間近だったのに、一晩で田がイノシシにメチャクチャにされて・・・」、「収穫を楽しみにしていたトウモロコシがサルに全部食べられた。」、最近、このような野生鳥獣による農作物被害が増えています。せっかく苦労して作った作物を荒らされた時の落胆は大きく、鳥獣害が原因で耕作をやめてしまう人さえいるのが現状です。
 獣害では、イノシシ、シカ、サルによる被害が多くなっています。
 イノシシは、出穂後の水稲やイモ類を中心とした野菜を好みます。土中のミミズ等を目当てに果樹園の土を掘り返し、果樹の根が痛み衰弱・枯死するという被害もみられます。対策としては、トタン柵(中が見えないように隙間を作らないことが大切)、ネット柵(外側に垂らすと足が絡むのを嫌がります)、電気柵(電気を感じる鼻先の高さの二〇cmとその上二〇cmの二本は必要です)等があります。最近では、麻布大学と近畿中国四国農業研究センターが共同開発したワイヤーメッシュ(溶接金網)柵の効果が高いとされ、各地で設置が増えています。金網上部三〇cmを外側に三〇度折り曲げることがポイントです。
 シカは一千種以上の植物を食べるため、農作物の被害も多岐にわたります。畑作物に限らず、集落や道際の雑草も大好物です。林業における被害も問題となっています。シカ対策は金属柵、ネット柵が主流で、約二mの高さが必要です。
 サルはイノシシ・シカ対策の柵は全く効果が無く、難なく乗り越えていきます。当センターを中心とした県鳥獣害対策チームでは、簡易侵入防止柵「猿落君」(写真)を開発し、改良を重ねています。「猿落君」は誰にでも簡単に設置できるように設計され、鉄パイプの支柱、支柱用ダンポール、約五cm目合のネットを組み合わせたものです。弾力性がありサルが登りにくい構造になっています。サルの学習程度に応じて柵を進化させていきます。「入られたからダメ」ではなく「入られたらより入りにくくする」努力が大事です。
 ここまで読んでいただいた方は、「柵を作れば大丈夫」と思われたかもしれません。しかし、獣害対策で最も重要なことは、柵作りではなく、「集落からエサをなくす、居場所をなくす」ことなのです。「エサ」とは畑にある収穫物だけではありません。誰も収穫をしないカキやクリの木、取り残しで放置された野菜や果実、生ゴミ、草刈り後に生えた柔らかい雑草・・・これらは野生動物にとって栄養たっぷりのありがたいエサになっています。また、耕作放棄地や竹藪、雑草の生い茂る空地などは格好の隠れ場所になり、畑に容易に近づけるようになります。したがって、野生動物にとっての「エサ」を減らし、生息場所をなくすため、集落全体での農地管理や追い払い(サル)の取り組みをおこない、野生動物にとって魅力のない集落にすることが、出没回数の減少、被害の減少へ繋がっていくのです。柵だけでは根本的な解決にはならないことを認識していただきたいと思います。



簡易侵入防止柵「猿落君」
2006年11月
農業総合センター
果樹振興センター 作物保護チーム 主任研究員 藤田博之