iJAMP-時事通信社- オピニオン寄稿(2011年2月3日 掲載) 
 

            「このくにのかたち」を考える
(その2) 

1.わが国は「中央分権」国家

知事 中央政府と地方政府の分権の問題がよく話題になりますが、その中央政府は果たして、一枚岩でしょうか。

 実は、わが国では、中央政府の中の権力が各省庁に分散しており、統一した国家の政治意思の決定がスムーズに行われないのが特徴で、問題点のように思います。

 先日、テレビで、「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」という番組が放送されていました。「わが国は、一丸となって戦争に向かったのではなく、中央の政治権力がバラバラだったので、全員が不利と思っていた戦争に突入するのを防げなかった」というのです。当時の政治権力者は「戦争はしたくなかったのにどうして戦争になったのか分からない」と言うばかりです。陸軍省内部の派閥争い、外務省の情報処理のまずさ、政治の党利党略などで、国家の重要な意思決定が迷走に迷走を重ねたようです。

 中央政府の構造は今も似たようなものではないのかと心配です。


2.政治意思決定の責任を明確に

 危機管理の鉄則は、物事の最終判断をする人を明確にし、その人に必要な情報を集中し、最も適切な判断をしてもらうことです。今日のように変化の激しい時代では、大変重要な原則です。

 よく、みんなで決めるのが民主的だという言い方をされることがありますが、「赤信号みんなで渡れば怖くない」と同じで無責任な決め方です。一方、選挙で選ばれたら、また、支持率が高ければ何でもできると思うのも間違いです。選挙は、政治意思の決定者が誰かを明確にしますが、個々の政治意思決定は、その都度、議会の議論などにより、評価、判断される必要があります。


3.地方政府の意思決定の仕組みは大丈夫?

 ところで、地方政府の政治意思の決定の仕組みには、問題はないのでしょうか。わが国の地方政府の政治意思の決定者である知事や市町村長は、選挙で直接選ばれますので、地方の政治意思の決定者が誰かは明確です。むしろ問題は、政治権力が各省庁に分散し、各省庁はその行政意思を個々別々に地方政府に押し付けようとし、また、法令や制度の命ずるところが、省庁別の行政目的に細分されており、地方政府の職員がそのような個別の国家意思に従順である習慣があることです。

 国の行政意思は、地方政府が行政を執行する段階で、地域の行政課題に基づく地域の行政意思に組み替え、リセットされなければいけません。地方政府の仕事は、縦に作られた道具を、横にして使うことだとも言えます。

 私は、県の職員に「君たちの上司は県民だ」と言っています。これは、県職員は、各省庁のためではなく、個別の議員のためでもなく、また知事のためでもなく、県民のため地域のために働く意識を持つようにという意味です。


4.県の役割はサッカーのMF(ミッドフィールダー)

 これまでわが国は「雁行(がんこう)型国家発展のモデル」を採用してきました。つまり、一部の先進地域(トップ雁)に国家資源を集中させ、その経済発展の果実を各地域(他の雁)に均てんさせることにより、国全体(雁の一隊)が発展しようというものです。

 しかし、競争力のある企業が立地する地域とそうでない地域には、必然的に経済力の地域格差が発生してしまいます。グローバル化された経済体制下では、これまでのような国家発展モデルでの地域格差の是正は難しくなっているのが実情です。中央政府は政治意思決定者を明確にし、国の発展モデルを新しく構築し、中央政府と地方政府のよき連携のもとに、国民と地域がバラバラにならないように、厳しい国際環境の中で生き延びていくことがこれからは必要です。

 国家組織をサッカーのポジションに例えると、国はDF(ディフェンダー)、市町村はFW(フォワード)、そして県はMFということになると思いますが、オールジャパンの国家組織が国際試合で良い成績を収めるためには、オシム元全日本監督の言われたように、MFたる県は、とにかく、よく考えて、よく走ることが肝要だと思っています。