iJAMP-時事通信社- オピニオン寄稿(2011年5月9日 掲載)




        「このくにのかたち」を考える(その3)

 荒井知事

1.「関西広域連合」が知事選の争点に浮上

 4月10日に投票が行われた奈良県知事選において、第3の候補が関西広域連合に奈良県は参加すべしと訴えられたため、知事選の争点に急浮上しました。私は広域連合への参加は見合わせるとの立場、もう一人の候補は参加すべきではないという意見でした。

 知事選挙では私が勝たせていただいたのですが、地方行政組織への参加の有無が、にわかに知事選の争点になったのでした。


2.「関西広域連合」とは何?

 ところで、選挙中、奈良県はどうして関西広域連合に参加しないのかとよく聞かれました。しかし、広域連合とはどのようなものかということ、つまり議会もある行政組織であるということや、どのようなことを行政権限にしようとしているのかが明確ではない行政組織であることについて、あまり理解されていないように思われました。

 「連携」と「連合」の違いはご存じですかと聞きますと、大概の人たちはキョトンとされました。「連携」は、都道府県の行政責任はそのままにして、業務を協力し合うもの。「連合」は、都道府県の行政責任を一部移して、新しい行政主体をつくるものです。したがって、「連携」では各都道府県の議会がチェックをしますが、「連合」では新たに議会をつくって審議することになり、各都道府県議会の権限は及びません。また、都道府県より広い地域を所管する行政機関という点では、道州制と広域連合は同じことですが、前者の場合は都道府県はなくなりますが、後者はそのままあるという点が異なります。

3.なぜ「関西広域連合」に参加しないのか

 広域連合は、府県と重複する「屋上屋を架す」行政組織で、無駄になる可能性がある。権限を広域連合に移すのは、分権ではなく集権になる。広域連合は行政主体として責任があいまいで、道路の建設、管理などの業務に係る事故で訴訟が起きた場合などには、責任ある主体になれるのか心配。連合議会の議席の配分が府県の人口規模に応じて5議席から2議席までと差があり、公共事業の予算の配分権を連合が持つようになると不公平が発生する。こうした点を私は参加しない理由に挙げてきました。それでもよく分からないという方もおられました。結局、「関西広域連合」という行政主体の権限、責任、業務の内容が、まだ明確になっていないことが根本の問題としてあるように思えます。



4.他府県依存で良しとするか、地域の自立を目指すのか

 
 奈良県在住の就業者の3割は大阪への通勤者です。奈良府民という呼び方もされます。このような方たちの生活意識では、大阪と行政組織を共有してもよいのではないかというように考えられても、おかしくない面もあります。一方、奈良県では、南和地域のように、都市から離れ、過疎に悩まされている地域もあります。

 「関西広域連合」という広域を所管する行政組織への参加の議論においては、奈良という地域が引き続き他府県依存でよいと思うのか、もっと自立的な地域になろうと思うのか、根本のところが問われているように思われました。また、県の人材、財政などの資源は、県外の広域的業務よりも県内の地域の振興に使いたいと思ってきました。南和地域のように経済的な地域格差のあるところを振興する政治主体は、広域行政組織ではなく、せいぜい県であり、合併が進まなかった奈良県では小規模の町村を助ける「奈良モデル」と呼ばれる行政手法を開発しつつあります。

5.地方行政組織のあり方は議会でもっと議論を

 県の上にある行政組織に権限を委ねるのは、その地域にとって大きな問題です。奈良県は明治20(1887)年に大阪府から分離独立をやっと果たしたという歴史もあります。議会、県民とともに慎重に考えて、結論を出していくべきことだと思います。県議会が、これから広域連合のことを議論しようと言っていただくようになったのは大歓迎です。