6)透析による副作用(透析導入後に比較的短期に現れる副作用)

副作用の現れ方は、人によって異なりますが、ゆっくりとした透析で徐々に体をならしていくことでその症状を軽くすることができます。
原因と症状をよく理解して副作用の出現予防に努めましょう。

(1)不均衡症侯群

透析導入期によくみられる副作用です。透析を行うと、血液中の老廃物は急速にとれてきれいになり、老廃物がとれにくい脳との間に濃度差が生じます。
つまり、濃度の高い脳は周囲から水分を吸い取り、むくんだ状態になります。不均衡症候群は、脳がむくみ、脳圧が高くなるために起こります。
症状は、頭痛、吐き気、嘔吐などですが、ひどい場合は、意識障害やけいれんが起こります。
不均衡症候群は透析に慣れてくれば起こらなくなりますが、まれに症状が縦続する場合もあり、透析困難症と呼ばれています。
これらの予防には、水分・塩分の制限を守ることが大切です。

(2)血圧の降下

除水が急激であったり、大量に除水された場合は血圧が低下します。
症状は、あくび、吐き気、嘔吐、頭痛、動悸、冷や汗などですが、ひどくなると胸痛、腹痛、意識障害などが起こります。
急激に血圧が下がることを“ショック”と言いますが、ショック症状が起きた場合には何らかの処置が必要です。
予防には体重を増やしすぎないよう、すなわち水分の摂取量に注意することが大切です。

(3)穿刺部の血管痛

穿刺針による血管壁の刺激、血管の狭窄、血管の収縮、血管の炎症などで血管の痛みが起こります。
血管の炎症以外は温湿布とマッサージで処置をしますが、部位によって血管の痛みに差があれば、一度、穿刺部位を変えてもらうことも大切です。

(4)不整脈

心室肥大や動脈硬化のある人では、透析中に不整脈が起こることがあります。
症状は脈の乱れ、胸がドキドキすることなどです。
また、血液中のカリウム濃度が高すぎたり、低すぎたりすると不整脈がでやすくなります。
予防には、血圧のコントロール、カロリー制限(高脂血症や肥満の予防)、カリウムの多い食品の制限、ストレスをためないことが大切です。

(5)出血の助長

血液の凝固を抑える薬剤であるへパリンの使用により、出血(痔出血、生理出血、鼻血、抜歯後など)しやすくなることにも注意しましょう。
へパリンの代わりに出血の危険の少ない血液凝固阻止剤もあります。生理や抜歯などで出血が気になる場合には、先生に相談しましょう。

(6)その他

透析中に急に体を動かすと、足の筋肉などがこわばったり、つっぱったり、痛みとして感じられたりすることなどがありますので注意しましょう。



   次へ   透析療養マニュアルトップページへ   戻る