iJAMP-時事通信社- オピニオン寄稿(2012年8月30日 掲載)

                 
「このくにのかたち」を考える(その8)
 
                                                                                                

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1.わが国の発展形態

 戦後の日本の発展は、「高度成長」と「格差の是正」とを両立させた世界でも珍しいケースである。それは、経済の分野では、日本の経済をけん引する輸出型製造業を中心に、系列化された周辺企業が一体となって、経済の高度成長を担ったことによる。

 一方、輸出型製造業が立地した大都市・太平洋ベルト地帯には、地方から安価な労働力が移住し、これらの地域では、流通業・インフラ産業・サービス業等が発展し、「都市の発展」を実現した。また、労働力に教育投資を行った上、都市人口をはき出した地方には、中央政府は公共事業、農業投資を行い、格差の是正を行った。

 高度成長の期間には、若年人口が増加し、豊富な労働力を供給できたこと、冷戦が終結し、世界が平和な時代を迎えたこと、わが国に災害が少なかったことなどが、わが国の高度成長を支えた面もある。

2.従来型発展モデルに限界

  このようなわが国独特の発展形態は、雁行(がんこう)型・ピラミッド型または城下町型と呼ばれているが、この発展モデルに限界が見えてきている。

 その原因は「少子高齢化」と「経済のグローバル化」である。

 「少子高齢化」は、労働人口を減少させ、経済の生産・消費の活力を減速させている。また、「経済のグローバル化」の中で、日本の企業は国内での企業立地を前提としなくなり、また、円高の影響で企業の海外流出が加速している。社会的には、企業が集中する大都市に人口も過度に集中し、生活環境が悪化するとともに、過密な都市では大地震等の災害発生時のリスクも拡大してきている。

 このような時代には、新たな発展モデルを追求・構築すべきではなかろうか。

 新しい発展モデルは、「集中と展開」を基本理念とする従来の発展モデルに替わり、「自立・連携・分散」を基本理念とする発展モデルになるべきである。「多様な地域が連携」して、「それぞれの地域が経済自立」を指向し、「企業・雇用・所得の分散」が図られる発展モデルである。最近、13の県が連携して「ふるさと知事ネットワーク」を形成して、地方知を発展の原動力にしようとしている。その基本理念は「自立・連携・分散」である。

3.多様な地域を土台に、地域の内発的産業振興を

 このような発展モデルでは、まず、「地域の経済的自立」を目指した「地域の内発的産業振興」を図っていく必要がある。そのため、地域特有の資源に根差した、「地域自身による地域づくりのノウハウの蓄積」が必要である。

 このような考え方は、「経済の地域主義」と呼ばれるが、地域主義に根差した地域経済自立のためには、次のような条件が必要であるとされている。

 (1)地域に歴史的に形成された伝統文化の再認識と継承

 (2)地域社会における雇用機会の確保

 (3)地域産業に必要な人的資源の供給・蓄積

 (4)地域起業家精神、地域の中枢機能の存在

 (5)地域経済収支の概念の定着と指標の開発

 (6)地域の意思決定の自由度の拡大

 このような経済発展モデルは、市場万能主義の経済政策、中央主導型の産業振興政策や巨大技術の振興に批判的であり、定住、経済と生態系の調和、経済の地域的循環の拡大、人口の適正な地理的分布などを大事にするものである。

4.「自立・連携・分散」を基本に国の統治機構再構築を

 以上のような経済発展モデルを指向する場合、政治・行政のあり方、統治機構の形態についても改革が必要となる。

 まず、わが国の統治機構は、地方の創意工夫による自立を推進することを基軸にしたものに再構築すべきであり、改めての制度設計が必要と思われる。

 わが国の統治機構を再構築するためには、まず、改めて、国の権限・責任は何かを、理念として確認し、また法体系として確立すべきである。

 また、地方の自立性を高める観点からの権限移譲と支援の体系化が必要である。

 そのうえで、地方の権限・責任の強化は、基礎自治体の権能強化を第一に考えるべきで、つぎに、既存の中間自治体の役割を積極的に評価し、位置づけるべきだと考える。

 このように考えると、今後の地方自治体の権能向上は、合併・分権の方法ではなく、それぞれ平等な立場に立った市町村・府県・国の間における、「協約による支援・連携」が中心となるべきである。

 これからの地方は、ピラミッド型国家発展形態の底辺に存在するのではなく、ネットワーク型国家発展形態の平等なプレーヤーの一員となるべきである。(了)