優良賞9

 生活に欠かせない判断力

                              智辯学園中学校 2年 三宅 真梨子

 「なんかわくわくする。本当に死んじゃうんじゃないの?」
 これはセウォル号沈没事故で船内放送を信じ、命を落としてしまった高校生が言っていた言葉です。
 私も同じような経験があります。それは東日本大震災です。その時私は茨城県に住んでいて、小学校四年生でした。授業が終わり、連絡帳を書いている時に大きな揺れを感じました。茨城県は奈良県に比べて地震が多く、月に一度くらいは小さな地震が起こっていたので、今回もいつもの地震だろうぐらいにしか思っていませんでした。しかし、いつもより揺れが大きく、揺れている時間も長かったので、「あれ?いつもと違う」と思っているうちに警報が鳴り、それと同時に「机の下に隠れなさい」という放送が入り、急に怖くなりました。揺れがますます激しくなり、「このまま死んじゃうのかな」とか「家族や家は大丈夫かな」などと思い、とても心配でした。机の下に隠れていると棚の上からトロフィーや花瓶、本などが落ちてきました。幸い教室にはカーペットが敷いてあったので割れたりはしませんでした。
 しばらくして揺れがおさまると放送で、「校庭へ避難しなさい」と言われ、上靴のまま非常階段から校庭へ逃げました。その後先生が靴を持ってきてくれて、保護者付き添いで帰りました。その帰り道はいつもと違い、電線がたるんでいました。そんな光景を初めて見たので怖かったです。
 家に帰ると、割れた食器などが散らばっていました。停電や断水が起こり、幾つかの自動販売機をまわって、できる限りの水やお茶を買ったり、断水になっていなかった公園の水飲み場などへ、友達と水をくみに行ったりしました。学校も休みになり、いつもと違う生活に私は「なんかわくわくする」とか「みんながいるから大丈夫」と思っていました。状況が把握出来ていない間、誰もが「なんかわくわくする」と思ってしまうのかもしれません。
 そんな中、横浜に出張中震災に遭い、帰宅難民となって東京にいた父から連絡が入り、原子力発電所が爆発したことを知りました。そこで母は、「もしまた原子力発電所が爆発して、大勢の人が関西に大移動することになったら、交通網がパンクするかもしれない。だから、できる限り早く移動する必要がある」と考えたそうです。そして、震災から二日後、電車が再開すると同時に奈良県のおばあちゃんの家に避難しました。朝起きてすぐ母に「今日奈良のおばあちゃんの家に行くよ」と言われ、必要な物だけを持って避難しました。社宅四、五十軒中避難したのは私の家族だけでした。
 そして、震災があって丁度一か月後の四月十一日、奈良県への引っ越しが完了しました。
 茨城県に残るか、奈良県に来るか、どちらの判断が正しかったかは後にならないとわかりません。しかし、父は会社のため、茨城県に残り、私達は奈良県に来た事に今は家族みんなが納得できています。だから後悔することはないと思います。
 行動を起こすには何かにつけ判断をしていかなければなりません。しかし、私たちの身の周りには誤った情報もたくさんあり、一人一人がそれらの情報が正しいか、判断していくことが必要です。その判断力を身につけるためには、普段からニュースや人の話を注意深く聞く必要があるので、これからは今まであまり見てこなかったニュースを注意深く見たり、人の話をしっかり聞こうと思います。そして、そのことについて考え、意見を持ち自分で判断出来るようになりたいです。