平成28年5月11日(水)知事定例記者会見

司会:
 おはようございます。
 ただいまから知事定例記者会見を始めさせていただきます。
 本日の発表案件はございませんので、ご質問等ある方はよろしくお願いいたします。

質疑応答

オバマ大統領の広島訪問発表について

時事通信:
 オバマ大統領の広島訪問が正式に発表されましたが、知事のご感想はいかがですか。

知事:
 すごいですね。なかなかアメリカの要人は広島には行かなかったんですけれども、大統領が来るというのはすごく大きなエポックメイキングだと思います。そういう流れが外交的にできかけてきたということもありますし、オバマ大統領の立場や、北朝鮮の話などがあるのかもしれませんが、日本にとってみれば特に大きなことだと思います。また、広島でどういうコメントを出されるのか注目したいと思います。

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奈良市月ヶ瀬の違法な土砂掘削について

産経新聞:
 奈良市月ヶ瀬の違法掘削の件で、業者から工事の完了届が提出されていなかった状況のまま、現場確認せずに2年間放置の期間があったということなんですが、それについて、改めてその経緯と、今後見直すべき点がどうなるかを教えていただきたいんですけども。

知事:
 奈良市月ヶ瀬のケースについては、担当課と議論して確認をしてきていますので、全体的なことを申し上げたいと思います。砂防指定地という、砂防法上の地域を国土交通大臣が指定して、その中での掘削、盛り土などを制限するということです。その法益は、自分の私有地の土だけれども、その盛り土、切り土の仕方によって、他の所有地あるいは公共の河川などの空間に悪い影響を及ぼしてはいけないということのように思います。

 奈良市月ヶ瀬の砂防指定は明治33年に行われている古くからの砂防指定地であり、その後茶畑になってきたわけです。丘陵地帯なので、当時は禿げ山にしないようにという目的がありましたが、今はすっかり変わっています。こういったことを前提にして、砂防指定地内の私有地の中ではどのような行為ができるのか、許可の範囲を逸脱した場合は、どのような行政対応が望ましいのか、という課題のように思います。これは、今年の7月1日から適用される条例改正とも関係あるように思います。よく言われる、切り土が急になっていて深く掘られているということですけれども、これは現行の条例では罰則の対象になっていないんです。今回の告発も、この砂防指定地の、この面積の中の、この地番の中で切り土しなさいと明示しているにもかかわらず、それを超えた場所で行為を行ったので違反になるといって告発したわけなんです。今回は、明らかな違反で罰則の対象になるんですけれども、土をなだらかに切ると言っていたのに、厳しい角度で切られていたのは、現行の条例では罰則の対象になっていないんですが、今年7月からは罰則の対象になります。条件違反の厳罰化というのが最近の傾向です。

 そのような状況、背景を説明しましたが、最近、各県とも条例改正を行うようになったのは、土地開発などが丘陵地に及ぶようになり、いわゆる「砂防」と言われる分野で、隣地に対する被害が出始めたからだと思います。砂防法上の変更の条件は、ほとんどが県知事に任されている状態です。

 そのような状況の中で、今回の許可行為が行われていたということです。今回は自らの私有地での行為ですので、職員は相手方と何度も議論を深めていました。いろんな人が私有地の中でこういった行為をされるのですが、他人の私有地に迷惑をかける、あるいは公有地の河川に迷惑をかける行為が頻発していれば、それは外形的にも悪意になってしまうので、行政的な監視を厳しく行くべき行為だとという認識をしなければいけないということです。基本的には、他人の私有地に迷惑をかけなければいいという法制であることは間違いないわけです。

 今回は条件違反ですけれども、まだ迷惑がかかっていないという状況です。見るからに怖そうだ、ということではありますが、自分の所有地内の地面をこれだけ切ってどこが悪いのかと、本人は思っているかもしれません。しかし、本人が起こした条件違反であることは間違いないという状況です。罰則がかからない条件違反なのですが、許可期限が切れたときの現地確認の実施と許可行為が終了したという届け出は必要でした。今振り返ると、迷惑がかからなければいいだろうという法益の中での判断だったように思います。職員をかばうわけではないのですが、私から見ると、迷惑がかかっていないから、という気持ちが基本的にあったのではないかと思います。しかし、もう少し緻密、厳密にやるような要請があって、7月の条例改正による厳罰化もそういう流れの中にあります。今回のケースで大事なのは監視モニターではないかと思います。

 ご質問に、現場確認をしていないということがありました。今回の告発は、「面積違反」ですので、切り土の「角度違反」は告発の対象になっていません。罰則のかからない条件違反ということになっています。ですから、現行の条例が甘かったといえば甘いんですけれども、7月1日から厳罰化するという中で、その新条例施行に合わせてマニュアルをつくるよう、検討を指示しました。マニュアルの中には現地確認を行う期日を条件付けることも盛り込まれるようですので、許可期限が過ぎたら、さらに掘削するという変更届が出ていても出ていなくても、現地確認することを想定しています。

 許可期間後は、現地確認をして、将来、隣接地の土砂を崩すような被害が及ぶ危険性が生じないように行為を制限するというような法益になると思います。それを超えて行為があった場合は、行為者自らが主観的に「危なくない」と言うだけでは認められず、行政行為としてさらに安全性を見ていくことになります。しかも、切り土の角度違反でも罰則をかけることになると思います。それと、知らない間に現状変更される可能性もありますので、切り土の角度がわかるような写真を撮るのが大事だと思います。自分の広い所有地で隣地に人家がないと、勝手に掘削してもわからないということが、産業廃棄物でも土砂掘削でも本当によくあるものですから、証拠写真を撮るようにしたいと思います。

 それと、現地確認の方法について。隣地で被害が発生しそうだといった通報で判明することが多いんですけれども、今回のケースは山の中でもあり、隣地に人家があまりなかったこともあって、人知れず掘られていたというような事情だと思います。現地をすぐに確認するということがマニュアルの中に入っていなかったんです。今申し上げたように、許可された範囲の中の自己の所有地を、危なくないと思って掘っていれば、切り土の角度についての違反があっても、なかなかそのことを観察するのが難しいのではないかという議論をしていますが、その都度、写真を撮るなどして確認しようと思っています。

 それから、許可の期日を過ぎても掘削していたということですが、通報があってからすぐに文書警告を発しています。それからしばらくは行為の勢いは落ちたように思いますが、実際、どのように進んでいるか、いつの間にあのような状態になったのかは、山の中のことでわからないままです。そのような事例ですので、単純に今から思えば現地確認をしておけばよかったと思いますけれども、そういう背景の中での意識だったと思います。

記者(奈良テレビ):
 今回、県が住民からの通報により事態を把握するまで、空白の2年間といいますか、客観的に外から見ると、2年間放置していたという印象をどうしても受けてしまうわけなんですけれども、今回、荒井知事として、監督する行政たる立場として、どこに一番の問題があったとお考えですか。

知事:
 基本的に所有権はとても強いので、砂防法で、ある法益のもとで許可に制限をかけています。奈良県だけではないのですが、その許可の条件が今までは甘く、所有権の方が強かったのではないかと思います。それが、自分の所有地であっても、危なそうなところは掘ってはいけないということになり、今でこそ、あんなに掘ってはいけなかったのではないかとおっしゃるんですが、今までは掘ってもよかったんだという中で、行政や世間も来ていたのではないかと思います。

 改正砂防条例の施行が7月1日となります。近隣府県も、この一、二年で罰則が強化されているわけなんです。急激にそういう風潮になってきたので、きちんと対応しなければいけない大事なケースだと思います。ですから、放置していたというふうにおっしゃいますけれども、悪いのは行為者なんです。県が悪いかどうかということに焦点を当てられますけれども、悪いのは行為者ではないですかと、私の立場としてはそう思います。行為者が悪いから県が悪くないかといった話ではなく、まず行為者が条件違反をしていて、県は行為者に条件を守らせる立場にあるという前提なので、条件を守らせる方法をどのようにするかということが大事なんだろうと思います。

 モニター、現地確認はとても大事だと思います。普通なら、危なければすぐにでも隣地から国や県に通報があります。今回はあまり通報がなかったということで、危ないというにおいがあまりしなかったのではないかと察せられますが、それは行為者が「危なくないんだ」と言って、周りもそう思っていたかもしれません。それが、あの状態まで掘られたので「危ないぞ」と通報されました。許可期限が切れたときにどんな状況だったのか確認し、写真を撮っておけば、いつから掘り進んでいったのかが分かったかもしれません。

 行為者も、今回の切り土は「切り過ぎた」という自覚があって、切り土を埋め戻すという是正の申告が出ています。県と行為者の間で、埋め戻しについてのやりとりがずっと続いていたということで、ここ最近は行政の介入が続いていました。まだ埋め戻しの行為はありませんけれども、そういった状況です。

記者(奈良テレビ):
 今回、あの場所に関しては、18回の指導を行って、それでも是正されないといいますか、その18回という回数は職員の方々の熱心な気持ちのあらわれでもあるかと思うんですけれども、一方で結果的に18回とも無視されてしまって、ああいう状態に至ってしまったということに関しては、知事はどのように思われますか。

知事:
 一言で言えば、砂防法に基づく条例の、自分の所有地の土は厳格に切り出すなり、埋め戻し、盛り土するなりしなきゃいけないよ、というその認識が、多少今までの風潮では緩かったのかなというふうに思います。

 行為者も是正すると言ってはいますが、是正しなくても今は罰則がかからないんです。これを強調しているようなところもあるんですが、今は行政罰がかからないけれども、7月1日からは行政罰がかかることになると、行為者は商売に影響するんです。行政罰をかけると、同じような事業ができなくなるというのが通常です。今は勧告しても、その後に何も悪いことをしなければ、また同じように許可申請できるので、法と条例が多少甘かったのかなという感じはありますが、各県とも急速に厳罰化されてきているということで、奈良県でも7月1日からは、新しい条例で、許可に付された条件に違反した場合、1年以下の懲役または禁錮、または50万円以下の罰金または拘留、科料に処するという罰則が初めてできます。現行の条例ではそういう罰則はないので、条例が軽いというか、そういった罰則がないのを、事業者に甘く見られていたのかな、という印象も持っています。今回は現行の条例の中での行政行為だったということも理解していただきたいと思うんですけれども、指導しかできなかったんです。罰則がかかることになれば、直ちに告発できると思いますが、そのへんが曖昧だったのかなと、私の立場からは思います。

読売新聞:
 この条例改正というのは、18回指導された今回の件にも関係があるのでしょうか。

知事:
 砂防法の条例改正をしようということで、3月1日に議会で通りました。時期的には、今回のケースも関係はあったのかも知れません。 
読売新聞:
 奈良県の場合、こういうような事例、目立つものが内部であったわけで、それを踏まえて改正という流れになったのでしょうか。

知事:
 先ほど、一般的に厳罰化の傾向がいろんな府県にありますと申し上げたんですが、奈良県は特に今回の件があったから条例を強化したのかというご質問ですが、それもあるかもしれないですね。

 時期的なことを考えると、今回のケースも背景にあるかも知れません。条例改正を3月議会で上げてもらったんですけれども、私の判断ですが、これはすべきだと思って条例改正をお願いしたということなんです。奈良市月ヶ瀬のケースはあまり正直存じませんでしたが、担当課としては、やはりこれは許せないと思ったかも知れません。しかし、それは全体的な傾向の中での話でもあるし、奈良県がこういうことで遅れをとってはいけないということは日ごろから言っています。近隣府県の罰則がきつくて奈良県が甘いと、産業廃棄物のケースでは奈良県が狙われたと聞いていますので、今回のケースは三重県の業者ですけれども、奈良県は罰則が緩いと思われてはいけないと改めて思います。だから、このケースは平成23年7月に切れる許可でしたので、5年間経って、条例改正が行われるということになります。

 平成23年に期限が切れても、そのときはあまり問題視されなかったんです。今に至って、こんなに切り土していたんだと問題視されるようになり、通報があって、中止指導、是正指導を行っても効かなかったという流れです。今度の条例改正では、そういったことも受けて指導を行うと担当課が言っていますが、やはり行政罰をかけておかないといけないと思います。もう二度とそういうことをさせないのが行政罰だと思います。少なくとも奈良県から行政罰を受ければ、奈良県では商売ができませんので、新たな条例は必要だということを改めて思います。

 新たな条例に合わせて、条例だけでも随分厳しくなると思いますけれども、「条例抜け」をされないようにモニターをしっかりしようとか、今度は厳しい条例を背景にしますので、立場が随分違うと私は思います。新たな条例では許可の条件もはっきりしますので、この条件に違反すると罰則がかかります。条件違反をすると、行政罰になり、商売ができなくなりますので、是正勧告の重みが随分違ってくると思います。これからの是正勧告は随分効いてくることを期待しますが、そんなようなことを振り返ってみると、この厳しい条例がやはり要ったのかなと、このケースで改めて思います。

 今までの条例のもとだと、何度是正勧告をしても、なかなか決め手になりませんでした。どうしてやってくれないんだ、ちょっとバカにされているんじゃないか、とまで私は職員に言いましたが、バカにしているというよりも、罪にならないのを見透かしているかも知れない、という感想を持ちます。

読売新聞:
 基本的に業者が悪いのは大前提なんですけれども、この2年間なかなか見つけられなかったというのは、改めてどうしてでしょうか。

知事:
 県土のモニター、あるいは行為を許可した砂防指定地のモニター(が十分でなかった)ということです。かばうわけではありませんが、普通なら、こういう(違反する)業者が多くいれば、しっかり見ようという気風が、県庁でも出てくると思います。今まではそうでもなかったのかなと思うんですが、「ヒヤリ・ハット」といいますが、多くの業者が条件違反をしていることがわかっていれば、今回の業者はどうだろうか、あるいは名うての業者があれば、あの業者はいつも違反するから確認に行っておこうとか、そういう勘が行政の現場でも働くようになると思います。このケースは、今後のためにももう少し深掘りしたいと思います。かばうわけではありませんが、職員がサボっていたわけではないと思っています。

 砂防指定地の中の行為は、そんなに悪いことはしないだろうという前提で、あるいは多少逸脱しても、自分の所有地で土量を計って出すべきだという条件もありません。今回の違反も、現行条例においては、所有地内で許可された面積を逸脱して掘ったというのが告発の主たる内容ですので、住民の方にとってみれば、どこまでが許可範囲かはわからないんです。今回の通報は、危険な角度で切り土を行っていることであり、緩やかに掘っていれば現行の条例違反であってもなかなか通報もなかったかも知れません。県土のモニターというのは、少ない職員で行っており、県土が勝手に動くようなことは災害時以外はないですけれども、今回のように、事業者が自分の所有地内での行為によって県土を動かすことが最近増えています。盛り土にしろ、切り土にしろ、隣接地に被害が及びそうな場合は大抵通報がありますが、今回は山の中のことであり、通報が2年間ありませんでした。しかし、その被害というのは現場を確認するとわかるので、通報はありがたいことだと思っています。

 許可期限後、どうしてすぐに見に行かなかったのということなんですが、職員をかばうわけではないのですが、今まではそういう悪質と思えるような事業者ばかりではなかったのではないかと推察をしています。こういうケースであれば、やはり許可条件を厳格に守っているかどうかのモニターが必要で、しかもそれは厳罰を科する関係から、必要条件になってくるのではないかと思います。今までは罰にもならなかったので、法律も甘かった結果、行政監視も甘かったかも知れません。大いに反省点だと思います。

 ただ、背景をよく知っていただかないと、単純に「どうしてしなかった」という皮相的な議論で終わっては、後が良くならないと思い、少し深掘りして研究しています。そして、大事な点を改善していきたいと思っています。

NHK:
 業者が悪いということと、それから、緩い法制度が世の中にあったというのは、すごくよくわかるんですけれども。

知事:
 そうですか、わかっていただいてありがたいです。

NHK:
 その上で伺いたいんですが、住民から通報がありましたが、それより前に、県は何度も気づくチャンスがあったのではないかと思います。

 許可した行為が完了したということは、内規上確認しなければいけないけれども、それを怠っていた、内規を無視していた、そして上司もそれをチェックしていなかった、そういう組織的な問題も、今回の件では明らかにあると思うんですが、そこは県民にはどう説明しますか。

知事:
 組織的というか、日頃、いろんなこと対しては「法に則れ」と言っています。「法に則れ」というのは、今回のような場合に、怠っていたのか、決めつけられるのかどうか逡巡しています。怠っていたということになれば、私が叱らなければいけません。先ほど、かばっているわけではないけれどもと何度も言っているのは、職員は勤務熱心ですので、怠っていたのかというと、そうではないように思います。法が緩いので、その法に沿って監視行動をしていたのではないかと思えるところもあるのです。ですから、そのあたりは見極めたいと思います。怠っていたのではないかと言って、それで済ませてしまってはいけないと思います。

現行条例でやるべきことは何だったのか、新条例では、やるべきことを確定するため、新条例のマニュアルと、旧条例の行為とを引き合わせて検証しようと思っています。ですから、「直ちに怠っていた」とは、決めつけられるのかどうか、まだ逡巡しています。

NHK:
 何か工事を完了しなければならない、というルールがあったとして、その確認をしない人がいたとしても、現時点では怠っていたかどうかというのは、調べないとわからないということでしょうか。

知事:
 わからないと思っています。悪い人が累々といれば監視し、報告があれば、私は必ず調査するように指示していたと思います。そういう「ヒヤリ・ハット」的な通報も、あまり私の耳には届いていなかったので、その被害が多少でもあれば注意をして、こういうことが隣の市町村であってはいけないから、同じような許可をしているところは、調査するように指示することが私の常ですので、必ずそうしていたと思います。今回は粛々と深掘りされたようなケースだと思いますので、この2年間、現地確認をしない間に何が起こったか、今となってはわからないんです。ですから、許可期限が切れた平成23年7月時点での写真があれば、是正指示や、終了届提出の指導を行うといった、表面的な対応であっても効果はあったと思います。その都度モニターをしないといけないので、表面的に穏やかに行為が行われていれば、なかなか現行条例では厳しい指導ができなかったのかなとも思います。ただ、それはもっと厳しくできたのではないか、というような観点から検証して、今度の厳罰化の新条例では、その趣旨が活きるように、行政監視のマニュアルを確立したいというのが、先ほどから繰り返し申し上げていることです。

 そういうことを前提にして、「怠っていたのか」というご質問に対して、直ちにそう言えるのかどうかは、正直逡巡しています。それなりに職員の気持ちはしっかりしていたのではないか、日ごろ私が指示していることを聞いていれば、怠るということは普通はないような気がします。怠っていた結果のように見えるのは、どういうところが原因なのか、ケースをもう少し深掘りしないとわかりません。他の類似ケースはどうなのか。今回の業者のように、特殊な魂胆が見えないようにうまくされたのか。悪い心を秘めた業者の跋扈(ばっこ)を許さないということが行政の責務ですので、基本的には、厳罰の条例がないとなかなか厳しいのではないかと、私の行政感覚では思います。怠っていたということまで言えるのかどうかはわかりません。

 今度の新条例のもとでいえば、今回のようなケースがあれば、明らかに「怠っていた」という指摘ができると思います。罰則がかかるのに、その行為を放置していた、ということになると思います。今までの、罰則がかからない行為を放置していたことについて「怠っていた」といえるのではないかと仰っているように聞こえますが、今回のようなケースができるのは、罰則がかかる、かからないに関わらず、おかしいことじゃないか、というのは確かにその通りだと思います。ただ、現時点では、法の規制と、被害発生の現実の、狭間の中で進んだのかな、という感想を持ちます。なかなかフラットに言えないというのが今の気持ちですが、ケースを深めて調べていきますと、もっと詳細な点で、ここをこうすればよかったのか、ということが発見できるのではないかと思います。そういう点は今後、具体的に検証していきたいと思います。

 私の役目は、行政のマニュアル、行政の行為を、法の精神に沿って、忠実に実行することにあると思っています。私が怠っていたかどうかは、法に則って職員が忠実にやってくれたかどうか、ということになると思いますので、結果責任は大きなものになります。法律が不備だったら、法律の不備に沿って忠実にやっていたのかもしれないということも微か(かすか)に思いますので、それが忠実義務に違反しているのかどうか、私の立場から関心を持ってこのケースを調べます。怠っていたかどうかというのは、今はちょっとまだ言い切れないのではないかと思っています。

NHK:
 念のため、細かくて恐縮ですが、「怠っていた」ということが言葉として使えなくても、職員の中に何か「やるべきことをできていなかった」と言っている職員がいたということはご存じですね。

知事:
 そうなんです、それは忠実な気持ちがまだあるんだなと思います。もっとすればよかったのかなと、言葉としては「もしかしたら怠っていたかも知れませんね」と職員が言っていますので、それは忠実な気持ちであり、私は、職員が怠っていたかどうかは、よく調べてみないとそうとも言えないのではないかと思っていますが、職員は今、「もっとうまくできたのではないか」と反省してくれているので、そういった姿勢は評価したいと思います。職員が「怠っていたのかも知れない」と表現していれば、それはまだ真面目な気持ちで行政を見てくれているんだな、というふうに思っています。ですから、私が「怠っていた」と見ているのかどうかというご質問については、もう少しその背景を調べないといけないと思いますが、職員が「もっとできたのではないか」と真摯に思ってくれているなら、それはそれで評価したいと思います。複雑な言い方で申しわけありませんけれども。

NHK:
 幾つか「できていなかった」ことがあるように、取材ではわかっていますので、ちょっとそこを知事に調べていただいて、また対策を教えていただければと思います。

知事:
 そういうことになるんですね。それが大事だと思います。行政で、ここはこうすればよかった、職員の言葉では、それをこうすればよかったのを怠っていた、という言葉になっていますが、私の観点からは、それは「怠っていた」ことになるのかどうかは、また別の立場の判断になるように思っています。「こうすればよかった」ということは、今後は、もちろんできると思いますけれども、そのときは「どうしてしなかったのか」と、こんな口調で私はいつも職員に言いますので、今回のケースは、法の体系を見ると、「どうしてしなかったのか」とまで言えるのかどうかは、もう少し調べてみたいというのが正直な気持ちです。

NHK:
 今日は雨ですけれども、これから梅雨で、奈良市月ヶ瀬の現場は安全なのかということですが。

知事:
 ああ、そうですね。

NHK:
 今どのような調査をされて、安全性についてどのような見解でしょうか。

知事:
 2人の専門家、土木技術ドクターに調べてもらった限りでは、緊急の危険は今のところはないようです。業者は、岩盤がしっかりしているので「崩れない」と言っていますが、県は、客観的なドクターに調査を依頼して、検証してもらいました。これから梅雨に入りますので、もう少し詳しく現地調査をしていただきたいと思っています。技術ドクターの方に、継続的に現地の土のモニターをしていただきたいと思っています。土の変化を詳しくモニターしていきたいと思っています。

NHK:
 モニターというのは、写真を撮ったり、センサーをつけたりですか。

担当課:
 杭を打って、底まで至るかどうかなどを検証します。

知事:
 土の中に、医学で言えば「探り棒」を差し込むようなことをしていただくようです。

奈良新聞:
 奈良新聞の北岡です。今の現場の関連からは外れた質問となりますが、前回の定例記者会見のときに知事もおっしゃっていましたように、ほかにも何か所か、月ヶ瀬と同様に違反行為のある現場があるということで。

知事:
 ああ、5カ所ですね。

奈良新聞:
 知事は、前回の定例記者会見で例を挙げられて、その中に、奈良市中ノ川町の違反行為案件がありました。もう5年、6年、もっと前になるかも知れません。土砂崩れが起きて国道を塞ぎました。あのときは県が行政代執行をやったはずです。そういった経験もありますから、その経験は何だったんだ、ということになります。そういうことも踏まえて、他の違反行為案件にも対応していかなければならないと思います。個々にケースが違うと思いますが、中ノ川の違反行為案件に対して行政代執行を行った経験があったにも関わらず、今回の月ヶ瀬の違反行為についての対応は、少し後手に回ったのかなという印象ですが、いかがですか。

知事:
 中ノ川のケースは、道路を塞いだから代執行ができたんです。民地を塞いだら、民民の関係になりますので、民地に対して行政代執行ができるか、というのは課題です。県民の方が自分の土地の地面に隣地から土が流れてきたと言って、県庁に、(土を)どかしてくれと言われたときに、はい、どかせます、と言って行政代執行ができるかというと、普通なら、なかなかできないと思います。中ノ川の場合のように、道路、河川という公共物を塞ぐということに対しては、行政代執行の権限は我々にあります。

 今回の月ヶ瀬のケースは、被害は民民で発生することにとどまると思いますので、茶畑が崩れ落ちたときには民事訴訟になります。違反行為は、法律のどこに違反しているのか、条例のどこに違反しているのか、隣地へ行政罰をかけてくれと訴えるわけではないので、うちの地面を動かしたのを復旧してくれ、損害賠償してくれ、という民事の訴えから始まるのが普通であります。これは日本が、所有権の意味がとても高い国であるということです。また、県は、民有地の監視について全面的に権限をいただいているわけではありません。法制の中で、隣地に、民民の場合でも隣地に迷惑をかけるようなことは、行為制限をしようという砂防法の精神までは来ていますが、実際に被害があるとき、今度の場合の代執行ということについては、代執行できるのかどうか、その是正措置を、土の埋め戻しをしなかった場合、代執行ができるのかどうかは、一つの大きな課題なんです。まだ結論は出ていませんけれども。事例はあっても結論は出ないケースがたくさんありますので、その整理を行政的に整理しなければいけないと思っています。

奈良新聞:
 この間の会見のときもおっしゃったように、中ノ川のケースが未解決の地域として残ってきました。そのようなことも踏まえて、新条例が、違反行為5カ所全般について何か変えていく、変わるということでしょうか。

知事:
 新条例になりますと、行為制限が厳格になってきます。旧条例では、無許可行為で盛り土、切り土を行っても、罰則がかかりませんでした。新条例では、罰則がかかりますので、許可条件というのは、とても重たいものとなります。違反行為のある5か所については、旧条例の中で許可された案件であり、旧条例の許可条件は、許可条件としてはそのまま生きています。しかし、今後新しく掘るのは大変難しくなると思います。また、新条例適用後、無許可の行為を行うと、罰則がかかります。いつ行為をしたんですか、と質問しますと、新条例施行前にしたことだから、という言い逃れを法律家や弁護士はすると思うんです。そうじゃないというために、県では、業者が行った行為は条例施行後の工事だということを、ちゃんと監視するという義務が、旧条例から新条例に移ったときに発生すると思います。新条例に向けてのマニュアルを作りたいと思っています。無許可行為の削減につながると確信しています。

毎日新聞:
 技術ドクターを入れて月ヶ瀬を調べているということですが、梅雨も近づいてきて、どういうスケジュール感で調査されていくのか、また、調査をして、県としてどういう対応ができるかというところを、どのようにお考えですか。

知事:
 そうですね、先ほど申しましたけども、すぐに崩れる危険性があるのかどうか、常時、継続調査のようにしていきたいと思います。もう一つは、三重の業者は、切土の埋め戻しをすると言っておられるんですが、いつしてくれるのか、ということです。やると言ってもやらない場合は、これまでと同じように、口頭での指導、文書での指導しかできないような法体系にしかなっておりません。先ほど仰ったように、行政で代執行して、中ノ川のケースは土を除く代執行だったのですが、今度は土を戻す代執行ができるのか、というのは大きな検討課題です。法制上すぐにできるのか、代執行して費用を求償するということが、安全が阻害されるようであれば、代執行もできるのかなという感じは持つんですけれども、民有地に入るわけですから、業者からは、人の地面に勝手に土を入れてと言うかも知れないし、住居侵入だと言うかも知れない。行政が私有地に入るためには、何か根拠が必要です。その辺りを詰めないといけないと思います。民有地の土地の形状が変わったときの代執行というのは、余り前例がないように聞いていますので、研究の課題だと思います、月ヶ瀬の茶畑との境界というケースが発生していますので、とりあえずは継続モニターが必要だと思っています。

読売新聞:
 7月1日に新しい条例が改正されるということですけど、マニュアルはそれまでに作られるのですか。

知事:
 そうですね。施行に間に合わせるように、6月の前半に作っていきたいと思います。

記者(毎日放送):
 業者は土を埋め戻すと言っていますが、今のところ、奈良県として業者が土を埋め戻したという確認は取れていますか。

担当課:
 トラックで何台かは土砂を搬入しています。搬入量は多くないです。

記者(毎日放送):
 搬入は一応見ているというとこですか。

担当課:
 はい。

知事:
 十分安心感を与えるだけ埋め戻してくれるのか、というのは先ほどの焦点ですね。

記者(毎日放送):
 それはいつぐらいに確認されましたか。

担当課:
 是正計画が提出されたのが平成27年の3月31日ですので、その後、4月です。

知事:
 去年の3月以降に、しばらくそういう行為があったんじゃないかと思われます。今度のケースでもジェスチャーだけじゃないかという疑いの目で見るようになってきています。今仰ったように、継続して、埋め戻すのかどうかという監視はしないといけない相手だということがよくわかってきていますので、そのようにしていきたいと思います。

 先ほど仰ったように、やると言ってやらないときはどうするのか、というご質問にもつながってくると思います。それを考えますと、なかなかハードルはあるな、と今の時点では思います。事態の深刻さと、私有地に行政行為が入ることのバランスが問題になってくるのかなと思います。業者が是正措置を講じるのが一番いいと思いますが、行政から、是正をせよと18回も指導してやらなかった相手だから、やっていますかと言っても、やります、やりますと、その都度1台、2台トラックを入れるだけ、ということもあり得ると、それほどの疑いを今となっては持つようになっています。

奈良新聞:
 埋め戻しの話で、今、業者の社長はもう逮捕されて身柄を拘束されていると聞いております。そうすると、原状回復できない状態が長期間続くと思いますが、例えば、これぐらいの期間で埋め戻しをするとか、そういったことを今の段階で検討したりはしているんですか。

知事:
 いつまでに埋め戻しをするという、自分で言っておられる期限があるようですので、その期限と現状との関係です。旧条例では、事業者の自発的意思の遂行ということで、そんなに拘束力がないと思うのですが、新条例では、罰則が背景にありますので、行政の指示に従わないと、次から二度と商売できないよということを言えるじゃないかということを、先ほど言いました。旧条例ではなかなかそこまでいかないんじゃないか、ちょっと詳細に調べますけれども、さすればどうするのか、というのが課題ですね。

毎日新聞:
 先ほど知事は質問の中で、職員の対応が怠っていたかどうか検討すると仰いました。つまり2年間、通報があるまで気づかなかったというところとか、現場確認に行かなかったという県の対応自体は、知事としては問題があったとは、まだすぐには捉えていない、ということでよろしいですか。

知事:
 問題があったと言い切れない、ということです。問題がなかった、と思っているわけでもないんですけども、問題があれば、その問題を建設的に捉えて、今後はなくすように努めたいということが1点です。また、過去に問題があったとすれば、どういうことで怠っていたのか、怠っていたとすれば、私の立場からは注意をしないといけません。行政的な処分の対象になるんですよね。そこまでいくのかと、私に対しての質問だと、そのように考え始めますので、そこまでいくのかどうかということは、自問自答しているというのが、先ほどのお答えなんです。

 「怠っていた」というのは、一般的な言葉で、本人が「もっとできたんじゃないか」と悔悟していると、悔やんでいるというように受け取っておりますので、それは「もうちょっとできたんじゃないか」ということを思ってくれるのは、ある面建設的な方向だと評価しております。旧条例、新条例の境目でもありますので、今後の新条例施行に、当然活かしたいというのが、私の気持ちであります。前向きに捉えていきたいという気持ちでありますので、それを「怠っていた」という一言で私の立場からは片づけ切れないと思います。「怠ってないよ」というところまでもいかないかもしれない。こうすればよかったのか、ああすればよかったのかということが出てくるのが、むしろ期待するところであります。

毎日新聞:
 行政の対応として、先ほどちょっと甘かったかどうかということも仰ったかと思うんですけれども、それも含めて。

知事:
 甘かったかどうかも同じことですね。怠っていたか、甘かったか、同じようなこととして思っています。

朝日新聞:
 今回、新条例や旧条例のことを仰っていて、今はその変わり目ということもあるかと思うんですけれども、旧条例であっても(切り土した)面積が条件を逸脱していたということは変わりないわけですね。

知事:
 罰則がかかっていない、条件逸脱ということですね。

朝日新聞:
 条件を逸脱したわけですよね。罰則がなかったので、ということも仰っていたかと思うんですが、不勉強で恐縮なんですけれども、罰則がなかったら、例えば終了届がなかったりとか、2年間現場確認に行かなかったり、終了届を出すように言わなかったり、ということは、しようがなかったということなんですか。

知事:
 そうも言っていないということを、先ほどから言っているじゃないですか。しようがなかったとも言ったことないでしょう。

朝日新聞:
 ただ、監視が甘かった……。

知事:
 そういうふうに決めつけないでほしい、しようがなかったと言っているんですか(と聞かれれば)、いえ、そうじゃありません、ということだけお答えしておきます。

朝日新聞:
 「監視も甘かった」ということも、さっき仰っていたかと思うんですが。

知事:
 「甘かった」とも言っていない。「甘かったかもしれないので検証します」と言っています。

朝日新聞:
 検証も含めて、ということですか。

知事:
 そういうことですね。私は行政事務として適正かどうかということを確立、確認する立場にあるものだから、辛気臭いことを皆さんの前で言って恐縮なんですけれども、行政経験として、一言で片づけられない背景があるように感じます。だから新条例施行に、いいように繋げたいという思いのほうが、今強いわけなんですね。だから、怠っていたか、しくじったかというふうに片づけちゃうと、新しい方にエネルギーが出ないように思っています。「こうすればよかった」という(職員の言葉)のは「評価する」と言ったのは、私の立場としては、新しい条例に向けてこうすればいい、ああすればいいというふうに、展開することを期待しています。

朝日新聞:
 それに関連して、条例改正の願いを知事がされたということですが、そのときは月ヶ瀬のケースはご存じなかったって仰っていたと思います。この条例改正、例えば職員の方だったり、いろんな方の力で改正されると思うんですが、そのときはこの月ヶ瀬のケースは関連しているんですか。

知事:
 私の意識にはそうはなかったんですけども、職員は「意識として入っている」と言っています。

 砂防の世界では、私有地での行為制限になるため曖昧なところがあります。砂防指定地の指定は国がしますけど、その中の行為制限は知事に委任されていることが多いので、それを厳罰化する、行為制限を厳格化するというのはいい傾向だと、3月にも思っていましたので、そうしてくれということで、3月の議会に条例改正について、上程させていただいたということであります。今度の新条例適用に当たっては、この月ヶ瀬のケースも踏まえて、しっかりしようよということを、今指示しています。月ヶ瀬のケースが、何が足らなかったのだろうかということは一々検証しないといけません。それを「怠っていた」という気持ちの問題もありますけれども、行政は具体的に何をすべきだったかということを詰めておいて、それをマニュアル化しないと、人が替わると、そのときの気持ちが飛んでしまうというのを私の立場からは恐れます。だから、後に誰が来てもそういうことは続けるものだというふうに、プロセスをつくっておきたいというのが今の方針であります。

読売新聞:
 先ほどから、今回のケースに関しては「深掘りしたい」「検証したい」とう、新条例にいいように繋げたい、と仰っていますが、この検証結果については、いつまでにまとめて、公表するお考えがあるのかどうかということをお聞かせください。

知事:
 マニュアルができるのが6月ですので、その中で、教訓を踏まえた点はこれこれです、というようなことが入ってくるように想像しています。そのように促したいと思います。月ヶ瀬のこのケースを踏まえて、新マニュアルはこのようにしました、ということが言えるようにしたいと思いますので、月ヶ瀬のケースだけを分離してまとめるかどうかは余り考えていませんでしたが、この新マニュアルに対しては、月ヶ瀬ケースというのは重大な意味を持ってきていると思いますので、その中で反映できると思います。あるいはドキュメントとして、月ヶ瀬のケースはこうだった、ああだったというパートが(マニュアルの中に)入ってくるように思っています。

読売新聞:
 公表についてはどうですか。

知事:
 公表しますよ。

読売新聞:
 担当の職員が、「もっとできた」と言われているというのは、何を「もっとできた」ということですか。

知事:
 今、ケースを詳細に検証していきたいと。

読売新聞:
 例えば、今回、届け出が1週間以内に出なかったですけれども、それを確認しなかったとか、そういったことでしょうか。

知事:
 今は例として挙げさせていただきましたが、期限が切れた後は、現場に行って写真を撮る、といったことはできることですので、そういうことが入ってくるのかな、と思っています。

読売新聞:
 今回はそれができていなかったから、それで本人も「もっとできた」と反省しているということですか。

知事:
 反省とか、そういう気持ちではなく、罰則なしの条例のもとでのことだから、と私は解釈していますが。今度は、罰則ありの条例の中で、条件違反が行われていないかどうかというのは、チェックする義務がより厳格に発生してくるでしょうから、そのようにしたいと思います。今までのことも踏まえて、皆さん、行政の対応を仰いますが、業者の対応こそが問題であると思います。業者が行政の指示どおりに対応してくれれば、こういうことは起こらないのですが、指示に従わない業者がいるから、行政が厳格化、厳罰化しないといけないというのが世の常であります。そういう業者がいるということが如実にわかりましたので、そういう業者にどう対応するのかということを、そういう業者もいるぞ、ということを今職員に言っています。そういう業者に、どう君たちは対応するのか、ということを言っていますので、今までのところは、そういう業者ばかりじゃなかったようには思いますが、善人と悪人をどう区別するのかというのは、そうすぐにはわからない。大体、表面的にもわからないですよね。

 2年間放置していて、2年間形状が変わってなければそのままだと思っていたか、通報のさらに2年前に、こんな切り土になっていれば、これは大変だったというので発見できたのではないかと思いますけど、許可期限が切れたときの形状を写真で撮ってないから、今となっては、そのときにもうすごいことになっていたのか、そうでもないのかというのはわからないんですね。だから許可期限が切れたときの写真は必要じゃないか、ということを今言っているのですが。

 許可期限が切れてからさらに掘ったのか、許可期限前にもう掘ってしまっていたか、掘ってしまっていれば、2年後に通報があったということなんだけども、その2年前に通報があっても、もしかしたら、まだなだらかでそう危険には見えなかったんじゃないか。隣地が茶畑ですから、毎年行っておられたと思うんですよね。だから、そんなに許可期限が切れたときは形状が変更されてなかったかもしれない。それは今となってはわかりません。2年前から、あのようになっていたというふうには、類推はできないと思います。

 過ぎたことなので、なかなかわからないこともあります。しかし、そこから教訓を酌み出して、やっぱり一々を積み上げていかないと、一概にこうだとは言えない。行政の立場から次に生かすためには、緻密な検証、ケーススタディーが必要だという感想を持っています。その中で、先ほどご質問のあった「怠っていた」のか、やるべきことをやっていなかったのか、というのは、もう少し出てくるんじゃないかなと思っています。

読売新聞:
 条例自体も、職員の意識としても、性善説に立っているということでしょうか。

知事:
 私の印象では性善説に立っていいたのかなと思います。条例の体系が職員の意識に反映したのかなと、ちょっとそういうことを、直には言っていませんが、そのように思うところもあります。だから、それは悪い業者が出てきて初めて、世の中には悪い奴がいるんだとわかってきた、というように捉えられるかもしれないし、もう少し他の事例も併せて見ないとわからないと思います。このようなケースはとても貴重ですので、これを大事にして、新条例の施行に繋げていきたいと思っています。

記者(毎日放送):
 確認ですが、7月1日奈良県の砂防条例が改正される、ということでよろしいですか。

知事:
 そうなんです。砂防の条例は、指定は国ですけど、その中での行為制限は知事にほとんど委任されていることがよくわかりました、砂防法の体系として、いい人が多く住んでいる地域は、緩い条例でもいいわけですが、悪い人が多く住んでいる地域はきつい条例でないと、悪い形状変更が行われるといった、単純な言い方をするとそうなるわけです。これは、結局相手は土ではなく人であり、事業者だということです。田舎の土地を買って土をたくさん採って、そのまま所有地をほったらかしたり、会社が潰れたりするとほったらかしになるケースが、産廃のケースではありました。それを警戒しないといけません。県土、国土もそうですが、常時監視というのは、なかなか難しい面があります。その中で、人を監視するということも大事だと思います。新条例のもとで知恵を出したいと思っています。

記者(関西テレビ):
 常時監視の難しさを仰っていましたが、例えば許可している工事期間内に、近隣の自治体であれば、条例で定期的に業者に作業状況報告をするように義務づけるということを決めている事例もありますが、新しいマニュアル等に、工事期間内でも業者から報告を求めるというようなお考えというのはありますでしょうか。

知事:
 それも有力な考え方だと思います。「モニタリング」ですね。期限失効後のモニタリングというのもありますけども、作業中のモニタリングというのもあります。それを、現地確認が必要かどうかというのは、そのケースによるのか、マニュアルの中で標準化しなければいけないと思います。業者さんに「そのときの写真を添付しなさいよ」「3か月に1度出してきなさいよ」と言うことは、これはマニュアルでできることだと思います。今回は、大変深刻ですが有益なケースだと思いますので、今仰ったような知恵も出てくると思います。一つの考え方であり、有力な考え方のように、今受け取らせていただきました。

司会:
 よろしいでしょうか。

 幹事者の方、よろしいでしょうか。

 それでは、以上をもちまして知事定例記者会見を終わらせていただきます。ありがとうございました。

知事:
 ありがとうございました。

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(発言内容については、読みやすくするために、広報広聴課で編集しています。)

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