平成29年1月4日(水)知事定例記者会見

司会:
 おはようございます。
 ただいまから、知事の年頭記者会見を始めさせていただきます。お時間は30分程度を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 本日の発表案件はございませんので、ご質問等ある方はご自由にお願いいたします。


案件:知事年頭所感

知事:
 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 発表案件というのはありませんが、取りとめもないことですけれども、年頭の感想を簡単に申し上げたいと思います。

  年末にも申し上げましたが、年を越えて休むと、いろんなメディアで1年のまとめや新年の予想などがたくさん出ています。そういったものを見ていて、今年はどうなるのかと考えていましたが、奈良県にとっても日本にとっても大事な年になるのではないかと思います。その一つは、診療報酬・介護報酬の一体施行が平成30年度から始まることについて、官邸の菅官房長官が大変熱心だという情報が出ていて、このことを決めるのが今年になるので、とても大きな話だと思います。官邸が力を入れると世の中動くということは、地方消費税清算基準の要望の際に実感しました。厚労族議員が反発していることも記事になっていましたが、今年はそういう面でも大事な年だと思いました。

 奈良県は、国民健康保険の県営化について、現場の総合性確保は大事な正念場だと思っていました。現場の総合性確保と制度の総合性確保については、実は裏腹なので、国は制度をどうするのかということを、厚生労働省に会議の場では言っていたんですけれども、あまり反応がなかったんです。医療・介護の総合性確保についての法律はできたけれども丸投げなのか、報酬制度で制度があらわれるので、きちんと考えているのかという感想を持っていたので、官邸が医療・介護の報酬の総合性確保に熱心になっていると聞いて、国も反応されている大事な年だと思います。

 それから、日本の経済全体として、アベノミクスが評価されるか、されないか。国は、特に金融であまり手を打てないので悩んでいたら、図らずも、アメリカで「トランプノミクス」と言われる株価の上昇があり、共連れで日本の株価も上がって格好がついたという話を金融筋から聞いたので、世界経済の動きが日本経済のいろんな動きに連動しているんだなと思いました。今年の動きは予測がつきませんけれども、目が離せないのは、外交や安全保障だけではなく、経済も大きな要素になるのではないかという感想を持ちました。

 お金が株に動くのか、債券に動くのかという動きについても、本当は地方政治からも注視していかなければいけないという気がしてきました。10年ほど前のホテル誘致の関係では、リーマンショックで資本が潮を引くように視界から消えてなくなったことを思うと、今は、逆に資本自身が溢れて上げ潮となり、奈良だけではなく、集中するところにはもっと潮が寄っていると思います。

 要は、金融緩和ですので、お金がどこかでマグマのように貯まっていて、そのはけ口に資本が動いているという感じなので、下手をすると、バブルの元になるかもしれないわけですが、それをどのようにコントロールしてバブル化させないか、バブルになった場合は始末をどれだけ早くできるかといった経済政策を、日本は20年前の反省から学んでいるのかといった記事がスマホニュースでも出始めており、いろんなことを書く人がいるなと思っています。

 今年はいろんなことが起こり、決めるための大事な年になるのではないかという印象です。

 年頭の所感というほどではないんですが、話題の先駆けとして申し上げたいと思いました。以上です。

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質疑応答

今年の県政の課題と知事の抱負について

毎日新聞:
平成29年度予算の要求状況が昨年末に公表されましたが、今年の県政の課題と知事の抱負を聞かせていただければと思います。

知事:
 昨年末に、予算要求状況の公表をいたしました。どの地域もそうだと思いますけれども、地方の予算が苦し目になってきていると思います。ざっと見ますと、後期高齢者や障害者への補助など、いろんな扶助費が10億円から100億円台と、奈良県にとってはすごく大きな額となっており、増勢ぎみですし、医療費についても病院経営がなかなか難しい状況ですし、保育所委託費も20億円程の要求になっています。そういった予算に対しては、国費の裏打ちもあるんですけれども、全面的に個別的なアイテムでの裏打ちがあるわけでもないので、社会保障、扶助を充実させる場合は財政を圧迫するという傾向が地方でもあり、やりくりが大事かと思います。

 今の日本は、ほとんどが債券を発行して扶助費を発行しているような体質になっています。これはなかなか厳しい経済体制です。ですから、官邸の菅官房長官が、社会保障の医療と介護の総合性確保、報酬を一生懸命にしようとおっしゃっているのも、そういう背景があるのではないかと思います。日本にとって、財政と社会保障の両立が一番の大きな課題だと思います。奈良県にとっても大きな課題です。

 やはり、地方消費税だけではなく、消費税率が上がらないことが、いろいろな財政を圧迫している原因になっているのではないかと思います。消費税率を上げると、経済を傷めるということが定説ですけれども、ではタイミングはいつかということになります。経済を傷めないタイミングの一つは、構造を強くしないといけないということと、あまり経済が落ち込んでいるときに追加でダメージを与えないということです。経済が少しバブルぎみのときのほうが増税のチャンスであるということが通例ですが、これは中央政治のご判断になります。

 しかし、一方、消費が弱いのに消費税率を上げるのかという説もありますが、デフレ対策と連動していますので、消費を強くするにはどうすればいいのかという課題が日本にはあります。アメリカは、どういうわけか消費が強いのですが、アジア、中国など消費が強かった地域・国が少し弱くなる傾向がありますし、ヨーロッパは先進国ですので、そもそもそんなに大きな勢いでありませんが、安定した伸びになっています。そのような経済が随分影響し、また経済が政治に影響する循環を、私などでは十分に見ることができないのですが、よく見ていかなければいけないと思っています。

 奈良県は、将来に向けて、大事なことを一つ一つできる限り傾注して行うことが重要だと思っています。未来へのいろんな投資的な経費については、そのリターンが将来の奈良県民にあるわけなので、できるだけ使いたいんですけれども、そのタイミングを間違うとなかなかうまく運営できない場合もあります。それと、奈良県のGDPは全体で3兆円程度と大変低いのですが、奈良県の財政支出が人件費も含めて5,000億円ぐらいですので、経済を牽引するというほどの大きな財政支出ではありません。奈良県内は資金の滞留が多いので、県民の方が持っておられる資金が、うまく回るようにするにはどうすればいいのかという地域経済対策について、工夫しながら行っていくということになります。

 大変逼迫してきている限られた予算の中で、「経済の活性化」と「くらしの向上」を大きな柱にしていますので、これから予算の工夫をしていくということになると思います。

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診療報酬制度等について

時事通信:
  診療報酬についての知事のお考えと、官邸と厚労族議員のバトルの話では、多分、診療報酬を圧縮することへの反論があるわけですが、その辺はどうなんでしょうか。

知事:
 そうですね、薬と医療と介護がどのように関係するのかということになります。介護が増えたら医療が減るという関係にあればいいんですが、そういうことでもありません。医療費、介護費をそれぞれ保険でもたせている国ですので、その総合性確保を、現場である我々に国が投げられたので、報酬についても総合性をどう確保するかという課題が国にあるわけです。「介護予防・日常生活支援総合事業」は平成30年度からスタートすることになりますので、これまで、改定時期がずれているとなかなか接続しなかった診療報酬と介護報酬を、同じ時期に改定すると、接続も可能であろうかと思います。

 接続というのはどういうことかというと、在宅介護と在宅医療の報酬をどのように図るのかという、現場に即応した報酬制度を立てることができるといいわけなんですけれども、現場の工夫と制度の工夫の両方が必要だと思います。それに、どういうわけか官邸が熱心になっておられるが、これまでは、報酬制度は厚労族議員が仕切っていたという反発の記事を、最近はよく起こることだと思って見ていました。

 制度的には、中央社会保険医療協議会で、業界団体が集まって決める仕組みになっているわけなんですけれども、賃金の決め方も消費に大きな影響があります。

 話題は少し飛びますけれども、日本労働組合総連合会の神津会長のインタビュー記事をスマホで読んだんですけれども、「デフレ対策で賃上げすることは大事なことだと思うが、官制賃上げだという批判もされているが。」という質問に対して、「いや、そうじゃない。」と、理屈を立てて反論されていました。

 過去、インフレのときに官製デフレということで賃上げを抑制する際に、私鉄総連が相場を決めていた時代は、私鉄総連の賃上げがあまり高くならないように、当時の後藤田官房長官が官邸から毎日のように当時の運輸省鉄道総局長に電話をかけてこられたという、インフレを抑える時期でした。私はその局長の下にいましたので、後藤田官房長官に、私鉄総連との交渉状況を報告していました。当時は、抑えろ、抑えろと、後藤田官房長官が官邸から言っておられた。今は、官邸が上げろと言っているだけで、官製賃上げというわけではないということです。昔から、インフレのときもデフレのときも政治が出てくるが、方向が違うだけだと神津会長が言っておられたのが印象的でした。

 歴史を振り返ってみると、そういうこともあり得るんだなと思います。しかし、国が大事なことを行っているという印象ですので、経済に消費を回すための賃上げや、医療費抑制のための総合性確保、抑制はストレートにはいきませんけれども、合理的に保険を発動するために保険のシステムを変えて、現場を合理的にするという方向に世の中が動いてくればと思います。というのは、病院の療養病床では、「医療と介護のサービスは届けるので、病院で生活するかわりに家で生活してください。」というふうに変えようとされているわけですから、その報酬制度というのは、病院の療養病床だったら病院での診療報酬一辺倒で、逆に介護が少ないからリハビリがなくて回復が遅いという弱点があったわけで、自宅で生活すると、リハビリと医療の両方のサービスが低くなり、それにともなって報酬が低くなるわけなので、全体に節約ぎみになるという理屈ですけれども、それでも健康維持ができるかどうかは、現場の我々の役目と制度の合理的な仕組みでとても大事なことだと見立てていますので、政府の中枢が関心を持っておられるのは、大変力強く感じた次第です。

時事通信:
 例えば、訪問看護師さんや介護士さんたちの働く環境が良くなることへのメリットとしてはいかがですか。

知事:
 そうですね、訪問看護の看護に対する報酬制度というものがあって、看護師は医療報酬と介護報酬の中にあるんだそうです。医療政策部長に聞いたら、看護師が1時間行くと時間単位で報酬が出るということだったんです。在宅でサービスを受けたい方は、診療報酬サービスと介護サービス、生活支援の3つが混在しているわけなので、ホームヘルパーとなると介護になるし、生活支援はまた別の行政で行われるわけですから、このあたりはどうなっていくのかなと思います。

 在宅での生活の質を上げるには、どのような報酬制度がいいのか、あるいは外から来る人の入りやすさをどのように仕立てていけばいいのかということについては、我々、現場の最大の関心事項ですので、それに報酬制度がどのように示唆をしてくれるのか。地域包括ケアの報酬制度はまだないので、介護報酬と診療報酬、生活支援という行政の仕組みをどのようにして費用の償いをするのかということが関心事項で、今年のいろんな努力の結果、その道筋ができればいいと思っていました。しかし厚労族議員がああだこうだと言う面は相変わらずだなと思ったんですけれども、政治の中の厚労族議員は、業界の意向を受けて動くので、どこかの業界が「何をするんだ」と言っているのかもしれません。その辺りはよくわかりません。そういう記事が新聞記事の転載でスマホニュースに載っていたので、年末の暇なときにそのようなことを念入りに見ていたというご報告です。

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県政の事業やプロジェクトの抱負について

産経新聞:
先ほどの質疑応答が少しわかりにくかったんですが、今年の抱負の部分を、県政の具体的な事業やプロジェクトと絡めて教えていただけますか。

知事:
先ほどは、制度的なことを中心に申し上げました。これは検討次第ということですので、やってみないとわかりませんが、目に見える今年の事業ということになりますと、事業は予算に結びつくまでに数年かかりますが、初期段階でも予算がつくと事業がスタートするというシグナルになるわけです。今までもそういったことで進んでいて、起工式が済んでいる事業もあるので、楽しみという意味での抱負は、「(仮称)登大路バスターミナル」や「平城宮跡歴史公園(朱雀大路西側地区)観光交流拠点施設」の整備事業、「大宮通り新ホテル・交流拠点事業」になります。

 あと、予算的には民活の関係となりますが、先ほど申し上げた「吉城園周辺地区」や「高畑町裁判所跡地」を整備する事業者の公募については、民間資本の潮が若干こちらに向かっているような感じがします。株価が上がるのは、資本が株式に流れているということですが、資本が株式ではなく不動産などに流れてくると、ホテルの投資も各地で進むのではないかと思いますので、そのときに、投資先としてもれ落ちないようにすることが大事です。今まではもれ落ちっ放しでした。民間資本の潮が引くときに公募することが難しいということは重々わかっていますので、潮が上がってくるときには魚が潮に入っているかもしれないので、きちんと網を出してすくえればということが奈良の願いですので、そういう投資的な案件が出てくるとうれしいと思います。これは予算で出てくるわけではありませんけれども、事業としてそのように出てくる可能性があります。

 それから、積み重ねということですが、「奈良モデル」と言われるまちづくりのプロジェクトにおいては、いろんな市町村から、公園をよくしたいとか、ちょっとしたリゾートを誘致したいなどという話が出てきていますので、それを小まめに応援していきたいと思っています。

 奈良のやるべきことは、小まめな積み重ねだと思いますが、そういう意味では、去年の暮れに発表した県内市町村のメタボ数値が良くなっているということが大変うれしかったという思いがあります。年末の記者会見の際に申し上げた「有効求人倍率」について、受理地別でも就業地別でも、現在、奈良県は近畿で3位ですけれども、就業地別になると、大阪のハローワークで奈良県内での就業を希望される場合は、奈良の有効求人倍率が上がるわけなんです。受理地別よりも就業地別の統計のほうが奈良のポイントが高く、実際に奈良で就職される場合の統計は就業地別ということになるので、そちらを注視していますけれども、随分上がってきているんです。これまで、1倍の有効求人倍率をなかなか超えることができませんでしたが、随分上がってきているんです。そのようなことからも経済の勢いがついてきていることがわかります。兵庫県は工場立地件数は多いんですが、どういうわけか有効求人倍率が低いんです。有効求人倍率は大阪、京都、奈良という順番だったでしょうか。

 良くなっているいろんな数値が、小まめな努力のおかげだったらいいねと庁内会議でも言っていました。このようなことは県庁だけでできるわけではありませんが、県庁の努力が多少役に立っていればと思います。有効求人倍率も、合計特殊出生率も、県庁がどのようなことを行って良くなったのかと言われても、すぐに答えられない類いの数字ですけれども、そのような数字が上がってくることはうれしいと思っています。

 障害者雇用率についても、県庁が行ったというよりも、県内の民間の小さな事業所が長年にわたっていろいろなことを続けていただいたからだと、誇りに思う数値です。そのように、いろいろな面を細かい予算で助けていくと、良い数値が並んでくるのではないかと実感してきていますので、大型プロジェクトということであれば、先ほど申し上げた内容になるわけですが、小まめな努力の積み重ねを引き続き行っていきたいという抱負です。

 あと、今年実施するプロジェクトの中では、約5億円の予算ですが、奈良で初めて開催する「国民文化祭」と「障害者芸術文化祭」について、一体開催を念入りにしていきたいと思います。

司会:
 では、お時間も参っておりますので、よろしいでしょうか。
 幹事者様、よろしいでしょうか。
 それでは、以上をもちまして年頭の記者会見を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

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(発言内容については、読みやすくするために、広報広聴課で編集しています。)

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