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大豆と年中行事


 大豆は、わが国には弥生時代初期に中国から入ってきたといわれ、米とともに貴重な食糧源の一つとして栽培されてきました。 大豆は食料としての他に、病気をはじめ、いろんな厄除けのために、年中行事の中で利用されてきました。
 
 節分の豆まきや正月のおせち料理の黒豆はその代表的なものといえます。ここではこれらにまつわる話を少し紹介したいと思います。

 豆はマメ(健康)に通じるため、正月には歯固めに豆を食べたり、茎や葉を入れた雑煮を食べて一年の無病息災を祈りました。また、現在はほとんど見られませんが、正月の三が日に雑煮の「焚き付け」(燃料)として大豆の枯れた茎枝を用いました。さらに門松の下に大豆の枯れた茎枝を置く風習もありました。これらは昔の人が厄除けのために考えたものです。小正月には、家の周囲に豆殻をまいて厄除けとする地方もあります。節分には、炒り大豆を神棚に供えた後、年の数(数え年)より一つだけ多く食べると、その年の運がよいといわれます。 また、その年の天候を占うために、節分の夜に囲炉裏の中へ各月の数だけ豆を入れて焼き、その焼き具合によって各月の天候を知る方法もあります。また、節分の豆を残しておいて、摩除けにすることもありました。初雷のなる頃にその豆を食べると、旅先などで雷が落ちないなどというものです。
 
 七夕に「ねむ流し」といって、ねむの木と大豆の葉を川に流して邪気を払うところもあります。 9月の名月の日を「豆名月」といい、枝豆を供え、この日は「他人の畑の豆をとつてもよい」などといったこともあります(これは昔の話ですが)。

 このように、大豆は年間を通して、食料だけでなく、多岐にわたり、利用されてきました。非科学的と思われることも多いようですが、昔の人々は代々これらの風習を受け継ぎ、日常生活の中で、心のよりどころとしてきたのではないでしょうか。


大豆を使った年間の主な行事

1月
(正月)
黒豆 おせち料理
大豆の茎 、 葉 雑煮の中にいれる
枯れた茎枝 雑煮の焚き付けまたは門松の下におく
1月
(小正月)
豆殻 家の周囲にまく
2月
(節分)
炒り大豆 神棚にそなえるかまたは家の中で豆まき
5月
(豆いりついたち)
炒り大豆 神棚にそなえる
7月
(七夕)
(ねむ流し)
大豆の葉 ねむの木と川へ流す
9月
(名月)
枝豆 縁側などでそなえる
12月
(大晦日)
炒り大豆 家の中で豆まき


1998年12月

奈良県農業試験場 作物開発担当 総括研究員 浅田幸男