スーパーセル苗の開発

 スーパーセル苗とはキャベツ、ブロッコリーなどのセル成形苗を通常の育苗期間(20~30日程度)の2倍以上の期間をかけて施肥せず灌水のみで育てた苗のことです。これまでのセル苗は移植適期が短く植え付け時期の設定が困難でしたが、この苗ならいつでも定植が可能です。さらに耐乾性、耐病虫性が高いとされています。そこで害虫に対してなぜ強くなるかを研究しています。ここではモンシロチョウを中心に紹介します。
 
害虫の発生状況 
 9月上旬にキャベツ(品種:楽山)の慣行苗(苗齢18日)とスーパーセル苗(苗齢39、60日)を圃場に定植して15日後の虫数を調べました。慣行のモスピラン粒剤を施用した区及び無処理区ともに慣行苗よりスーパーセル苗の虫数が低く抑えられます(図)。スーパーセル苗は粒剤処理しなくても、慣行苗で粒剤処理したものよりアブラムシとモンシロチョウ幼虫数が少ないことがわかりました。ただしヨトウの卵塊数はスーパーセル苗でも差がありませんでした。
 
定植後の葉色変化とモンシロチョウの産卵
 スーパーセル苗の外観上の特徴は緑色が薄い点にありますが、定植してから約3週間で慣行苗と同程度の緑色となります。そのころになるとモンシロチョウの産卵数も慣行苗と同じ数になります。モンシロチョウは葉の緑色により植物を見いだします。定植後、葉の緑色が慣行苗と同程度になるまでがモンシロチョウに対して見つかりにくい時期といえます。モンシロチョウは着葉後、アブラナ科野菜特有のカラシ油などの揮発性の物質により産卵が誘起されます。スーパーセル苗のカラシ油類の揮発量を測定したところ慣行苗の約4分の1以下の揮発量でした。このことからスーパーセル苗はモンシロチョウにとって見つけにくく、たとえ見つけても産卵しにくい苗であるといえます。さらに、ワックス層が慣行苗よりも3倍量程度発達していることがわかりました。これを孵化直後のモンシロチョウおよびヨトウ幼虫に餌として与えると餓死しました。スーパーセル苗は幼虫にとっては餌としてふさわしくない植物体であるといえます。
左2枚がスーパーセル苗、右が慣行苗

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