報 道 資 料
平成18年7月4日
奈良県工業技術センター
所長 山中 信介
担当者 繊維・高分子技術チーム
三木、足立
機械・電子・情報技術チーム
谷口
TEL:0742-33-0817(代表)
長寿命の錠剤成形用精密金型を開発
1 ポイント
(1)県内の製薬業界、及び、製菓・食品等業界において、錠剤製造コストの大幅な削減を可能とした。
粉末から錠剤を成形する装置(錠剤成型機)に使用する、錠剤成形用精密金型(杵(きね)・打錠型)に、密着性に優れたダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜をコーティングすることで、従来金型に比べ寿命を3.5倍以上に延ばし、打錠障害を減少させ、かつ、コストは従来品の1.5倍程度に抑えることが出来た。
これは、従来の硬質クロムメッキや窒化クロムコーティングに代わる成膜技術として、安全性、環境、リサイクルの側面から脱クロム化を進める上でも有利な技術である。

試作した錠剤成形用精密金型(杵)<杵面(先端)の大きさ:φ8mm>
(2)県内製薬業界等が生産管理で抱える課題(技術ニーズ)に対し、佐藤薬品工業 株式会社【代表取締役社長 佐藤 進、橿原市観音寺町9番地の2】の協力のもと、独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)と、株式会社 栗田製作所【代表取締役 栗田 好雄】、及び、当センターが、保有する技術シーズを持ち寄り連携し技術的課題を解決、製造販売の目処が立った。
●技術ニーズ
・打錠障害の解消
・生産コスト削減に有効な高寿命打錠用金型出現への期待
●技術シーズ
・プラズマイオン注入・成膜法<産総研と株式会社栗田製作所の共同開発>
・合金工具鋼材及び高速度工具鋼材表面の下地処理とプラズマイオン注入・成膜法によるDLC膜のコーティングとの併用によるDLC膜の高密着化技術<当センター>
●解決した実用化のための技術的課題
・下地処理を検討し、約2トンの成形圧力にも耐えるDLC膜の高密着化を実現
・高密着化に最適なDLC成膜条件の検討
・打錠障害減少の確認<実証試験による検討>
・高寿命化の確認<実証試験による既存の窒化クロムコーティング金型との比較検討>
2 業界の背景
平成17年4月の改正薬事法施行に伴い、医薬品の承認制度が「製造承認」から「販売承認」に変更され、大手医薬品メーカーは、自前で製造設備を持つ必要がなくなり、合理化のため自社開発の医薬品の製造を他の医薬品製造業者に委託するようになってきた。
古くから家庭用配置薬の製造を担ってきた県の製薬業界は、これらの受託生産拡大を見込み、海外も交えた競争に勝ち抜くためコストダウンを進めている。このような中、生産管理面で錠剤成形用精密金型の損傷、摩耗が大きな問題となっている。
3 当センター研究開発経緯
(1)県内企業で、医薬品の受託加工業務を主とする佐藤薬品工業株式会社より、錠剤成形用精密金型の損傷、摩耗対策について相談を受ける。
(2)平成15年度、日本自転車振興会 自転車等機械工業振興補助事業の補助金交付を受け、奈良県は当センターにプラズマコーティング装置を導入。
(3)平成16年度、独立行政法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)の地域中小企業支援型研究開発(共同研究型)事業「錠剤成形用精密金型の高寿命化」(産総研と栗田製作所の共同研究)に、受託研究者として参加。金型の鉄鋼材料基材とDLC膜との密着性の向上を図った。
佐藤薬品工業株式会社は開発協力企業として参加。複数の試作杵による錠剤打錠試験を実施。
(4)平成17年度、佐藤薬品工業株式会社提供の試験用錠剤成型機等を用い、連続打錠試験を長期にわたり実施し、打錠障害、耐久性等について検討を行う。
4 今後の展開
本研究開発成果は、高荷重下において耐摩擦・耐摩耗特性が要求される各種しゅう動部材などへの応用が可能である。当センターでは、ものづくりオープンラボ事業において、県内中小企業を対象に各企業に応じた研究開発環境を無償提供している。この制度を活用し本成果を応用した製品開発を行うことも可能である。