教育長メッセージ

 教育長のメッセージ
  
 皆さん、こんにちは。このページでは、奈良県教育の現状や課題、それらに対しての取組や今後の方向性などについての思いを、県民の皆さんにご紹介いたします。

平成26年度 奈良県市町村教育委員長・教育長会開会挨拶

    平成26年度 奈良県市町村教育委員長・教育長会開会挨拶
                                             
                        平成26年6月4日(水)
                                                          於 奈良県立教育研究所  

 
1 はじめに
 皆さんおはようございます。この4月に教育長を拝命しました吉田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、公務ご多忙の中、平成26年度市町村教育委員長・教育長会にご出席賜りまして、誠にありがとうございます。平素より、本県教育活動の推進に、ご理解ご協力を賜っておりますことに、深く感謝を申し上げます。それぞれの委員会におかれましては、子どもたちの健やかな成長を願い、教育活動の推進並びに改善・改革に取り組んでいただいていることと思います。
 私も教員の経験があり、県教育委員会事務局でも14年勤務していました。教員としての経験、事務局での経験を生かしながら、奈良県教育の充実・発展のために、微力ではありますが、精一杯取り組んでいきたいと思っています。皆様方のご支援とご協力をよろしくお願いします。

2 平成26年度の人事異動と教職員の資質向上に向けて
 今年度も「教職員人事異動方針」を踏まえて、「平成26年4月教職員人事異動の重点項目」の実現に務めました。まず、校種間交流等によって多様な経験を積んでもらう人事交流を行いました。具体には、小・中学校間で34件、小・中学校と特別支援学校間で8件、そして、福井県への教員派遣です。ご承知のように、福井県は学力・体力で全国トップクラスです。福井県の小学校で教員が一年間研修することによって、福井県の実態も把握しながら、奈良県の教育に生かしていきたいと考えています。
 次に、管理職・事務局指導主事等への49歳以下の若手の登用も進めました。小・中学校の教頭には6名、県教委事務局へは19名、市町村教育委員会等へは13名を登用しております。このように若手を登用することによって、奈良県教育が活性化するものと考えています。
 続いて、女性管理職の登用ですが、小・中学校の女性管理職に12名を登用しました。これにより女性管理職の総数は51名となり、全管理職に占める女性の割合は、8.4%となりました。
 さらに、同一校の長期勤務者の解消にも努めました。同一校10年以上の勤務者の割合は現在3.7%で、前年度より0.5ポイント減少させることができました。新規採用教員においては、3年から6年以内の異動に努めています。
 この中で特に、小中学校の女性管理職の登用については、先程申しましたように、前年度から0.2ポイントの増加となりましたが、全国水準が平成25年度で15.7%ということで、奈良県における女性管理職の登用は依然として全国平均の約半分という状況です。ぜひ市町村の方でも女性の先生方が管理職を目指すよう、人材の発掘とバックアップをお願いしたいと思います。
 このように、平成26年4月の人事異動につきましても、皆様方のおかげをもちまして、無事終えることができ、感謝いたします。今後も全県的な視点で、適材を適所に配置していきたいと考えておりますので、ご協力をお願いします。
 次に、来年度の採用については、小・中学校全体で325名程度の採用を予定しています。使命感や情熱にあふれ、愛情をもって児童・生徒との信頼関係が築ける教員、豊かな人間性をもち、深い専門知識に裏付けられた実践的な指導ができる教員、奈良の伝統・文化を理解し、地域と社会的絆の中で子どもを育てられる教員、このような人材を求めています。
 ここ数年間、小・中学校で300人規模の採用が続いています。教職員の平均年齢も徐々に下がってきました。学校現場に若いエネルギーが増加することは大いに歓迎するところですが、今後、教員としての指導力の継承と育成が課題となってきます。
 そこで、今年度、新規事業として、学力向上支援サイト「まなびー奈良」という教員に対する支援サイトを立ち上げ、先生方の指導力の向上に努めていきます。この事業により全国学力・学習状況調査の結果から明らかとなり本県教育の課題となっている、児童・生徒の学力・学習意欲の向上に関する取組を支援したいと思っています。児童・生徒向けの国語、算数、数学等の各種問題や個々の先生方が取り組んだ実践・研究成果等をネットで配信します。また、数学、理科においては、授業モデルの動画配信も予定しています。

3 奈良県の教育力を高めるために 
 奈良県の地域の教育力向上のために、平成23年度より荒井知事を議長とし、「奈良県地域教育力サミット」を開催しています。昨年は、これまでの四つの部会に加え、新しく「奈良教育基本問題検討部会」が荒井知事を委員長として設置されました。今後は、「奈良らしいユニークな教育の理念(奈良教育理念)を作成し、実践の道筋を明らかにする」ことをテーマに、議論が進められていくと考えています。
 ところで、5月20日には、教育委員会制度を見直す地方教育行政法改正法案が衆議院本会議で可決され、今参議院で審議がされています。全国教育長協議会でも、このことが話題になっていました。特に、改正の柱となる「総合教育会議」は、今後、首長を中心に開催していくことになりますが、「奈良県地域教育力サミット」では「総合教育会議」の前段階の議論を進めており、教育行政の指針となるような「大綱」の策定を、県は目指しています。場合によっては、条例とすることが可能かどうかも検討しているところです。この地教行法の改正法案は、6月の中下旬には制定されると聞いており、来年度から施行されることになると思われます。教育委員長と教育長が一体となった「新教育長」への移行の時期については、現在の教育長の任期が残っていましたら、その方は、任期満了まで現在の制度で継続できますが、まだ任期途中で一旦辞職して、改めて議会の同意を経て「新教育長」に就任することも可能であると、国の方では言っておりました。ただ、同じ人物が辞めて、再度承認されるということがあり得るのか。国の方では、議会がその旨を理解していただけるのでしたら可能であると言っておりましたが、各都道府県の教育長の中からは、「一旦辞めた者をもう一度再任するというのは難しいのではないか」という声も上がっていました。従いまして、今の教育長の任期は残っておって、そのまま引き続いて在任する場合は、教育委員長と教育長が旧制度を維持できるというような法改正です。
 平成25年度の全国学力・学習状況調査の質問紙調査結果については、各市町村でも分析していただいていますが、特に、奈良県の子どもたちが、「地域行事に参加している」や「近所の人に会ったときにあいさつをしている」と回答した割合は、幾分改善傾向がみられるものの、残念ながら全国平均より下回っている状況です。
 本県教育の課題である規範意識、社会性の向上を図るために、保護者や地域の方々が学校運営に参画し、学校と協働して、みんなで子どもたちを育てていく取組である「地域と共にある学校づくり」を進めているところです。学校を取り巻く地域社会では、核家族化・都市化・少子化等がどんどん進み、地域力が低下して、自治会組織内の人材や後継者の不足が深刻化している状況があります。地域の方々が子どもたちの育ちに積極的に関わっていただくことは、地域コミュニティの根幹に関わることでもあります。この取組は、単に地域の方々に学校を支援していただくだけではなく、学校も地域のボランティア活動等に参加し、学校と地域がパートナーの関係を築きながら、子どもたちの自己有用感を育くみ、地域を愛し地域に愛される子どもを育てていくということが重要なポイントです。この取組を全県的に推進することで、県全体の教育力を高めていきたいと考えています。

4 体罰の防止、いじめの早期発見・早期対応に向けて 
 体罰やいじめについては、ここ数年、体罰やいじめに起因して子どもたちの尊い命が奪われる事件が続いています。
 5月16日に実施した「体罰に関する研修会」には、各委員会からも多数の出席をいただき、本当にありがとうございました。「教員の服務とスクール・コンプライアンス-体罰問題を中心に-」というテーマで、日本女子大学の坂田仰(さかた たかし)氏に講演いただきました。坂田氏は、大阪で高校が荒れている時代に教員をされていた方でありますが、この講演で氏は、実際の判例を基にし、「価値観の多様化している社会状況の変化に教員が十分対応しきれていないのではないか。これまでの情緒的な学校経営・生徒指導から脱却する必要であるのではないか。」と述べておられました。
 本県では、教職員向け体罰防止啓発用冊子及びリーフレット「信頼される教職員であり続けるために」を配布しております。引き続き体罰の防止に努めていきます。各市町村教育委員会におかれましても冊子・リーフレットを活用していただき、各校への一層の啓発をお願いしたいと思います。
 また、いじめ防止対策推進法が公布され1年が経とうとしています。6月2日にNPO法人全国いじめ被害者の会代表の大澤秀明氏から、県及び県教委へ申入れがありました。県は教育振興課長が、教委は私が申入れを受け取りました。申入書には、「戦後から55年までは重大ないじめはなく、それは教員が厳しく指導していたからである。近年自殺などの結果を招く重大ないじめが起きている背景として、発見が遅れたのではなくて、教員が適切な対処をしていないのではないか、場合によっては、教員が見て見ぬふりをしたのではないか。」「単なる喧嘩ではなく、『その背景にはいじめがあるのでは』という視点をもって、毅然と適切に子どもたちを指導してもらいたい。」という趣旨のことが書かれていました。
 大澤氏ご自身もご子息をいじめで亡くされています。氏の言っておられることは真摯に受け止めるべきであると思っています。また、「いじめ防止対策推進法というものは、重大ないじめが起こったときの対処方法が書かれているものであり、この法律は事後対策であって、そのような事後対策をしなくてよいように、先生方にはしっかり頑張っていただきたい。」とも言っておられました。いじめ防止対策推進法にあるように、重大で深刻ないじめが起こったときの対応を、県教委として取る必要がないように、現場の先生方を支援していきたいと考えています。

5 おわりに 
 奈良県の三つの教育課題である、学習意欲、規範意識・社会性、体力の向上に関わって、6月16日、午後1時半から午後4時まで、桜井市立図書館で「奈良県・市町村長サミット」を開催します。教育長の皆様も一緒に入っていただいて、全力学力・学習状況調査の結果や全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果分析をもとに、議論を深めていきたいと考えています。当初は市町村長の皆様のみの出席を予定しており、教育長の皆様には急なご案内になりましたが、趣旨を理解いただき、出席いただきますよう、よろしくお願いします。
 最後になりましたけれども、各市町村教育委員会のますますのご発展と、皆様方のご健勝を祈念し、私の挨拶とさせていただきます。