教育長メッセージ

 教育長のメッセージ
  
 皆さん、こんにちは。このページでは、奈良県教育の現状や課題、それらに対しての取組や今後の方向性などについての思いを、県民の皆さんにご紹介いたします。

平成28年度奈良県市町村教育委員長・教育長会挨拶

                         平成28年度 奈良県市町村教育委員長・教育長会挨拶(教育長)
                                              
                                                                                                平成28年6月1日(水)
                                                                                                             於 奈良県立教育研究所
 

1 はじめに
 皆様におかれましては、平素より本県教育の充実に取り組んでいただき感謝申し上げます。
 この月曜日に、全国都道府県教育長協議会研究会議が開催されました。
文部科学省の初等中等教育局長から、教職員の定数改善にかかる本年度の
状況についての話がありました。昨年度は、
務省からかなりの定数削減を求められましたが
、今年度は財務省はそのような姿勢ではないということです。ただ、第8次定数改善計画を策定することは難しいようです。少人数学級の定数をどのように確保するのか、また、指導方法改善のための定数をどのように確保するのかということについては、これから財務省との攻防になるだろうということでした。
 それから、英語教育については、文部科学省でもかなり危機感をもっておられたように思います。日本の子どもたちがオールイングリッシュで自分の考えを説明できる、そのような力を英語教育において付けることができるよう、おそらく経済界等々からもかなりの要望があるのではないかと思います。中学校における英語の全国調査実施を含めて、今後、英語教育をどのように充実していくかというお話がありました。
 さらに、高校の大学入試改革について、あるいは、高校への基礎学力テストの導入について等、高大接続についての話題もありました。今後、大きな改革のうねりとなり、変わっていくのではないかという思いをもっております。

 
2 奈良県教育振興大綱について
 「奈良県教育振興大綱」については、奈良県総合教育会議を昨年度に4回開催し、平成28年3月31日に策定いたしました。
  この大綱の策定にあたりましては、重点項目をいくつかあげております
。実学教育については、国の方で実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関を設置しようという動きがありますが、県の方でも職業につく専門教育とキャリア教育をどのようにしていくのかということを重点項目としてあげております。また、就学前教育や文化芸術を軸とした地域振興、市町村ではかなり取り組んでいただいております郷土教育や地元を愛する教育、グローバルな人材育成を目的としたグローバル教育も重点項目としてあげております。
  大綱の実行に向けては、ライフステージに応じて「縦」の円滑な接続をきちんと行っていこうという考えをもっております。いわゆる就学前の幼と小の接続をどうするか、それから小と中の接続をどうするか、中と高の連携もどのようにしていくのかというようなことを中心に、今後取り組んでいきたいと思います。特に、県としては、本年度も引き続き、小・中学校教員の合同研修をしっかり充実させていきたいと考えております。指導主事の派遣についても、小・中合同で研修していただいているものに対して、積極的に派遣をさせていただきます。まだ、いわゆる中1ギャップが解消されておらず、中1になると不登校の数がかなり増加するという実態もありますので、何とかこの解消に努めていきたいと思っております。それから、今年度は県の学力テストを行っている小学校4年生の全家庭に対して「家庭教育の手引き」を出させていただきましたが、来年度は新たに中学校1年生に「進路の手引き」を出させていただく予定をしております。
 この大綱の実行に向けては、市町村教育委員会、さらに現場の先生方の意識が大変大切であることは言うまでもありません。エビデンスベーストで数値目標を掲げさせていただいておりますが、県教育委員会といたしましては、数値だけではなく、アンケート等を通して、市町村教委の方々や現場の先生方の実践の中からいろいろな声を聞かせていただきながら、大綱の実行に向け努力してまいりたいと思っております。
 また、「地域とともに学校はあるべきである」ということは、皆さん一番よく実感されておられると思いますが、この6月に、五條高等学校をコミュニティ・スクールに指定する予定で進めております。地域の小・中学校と高等学校が連携し、高等学校の教員の専門性が小学校で発揮されることにより、子どもたちの関心や意欲の高まりが期待できますし、そういった取組をコミュニティ・スクールの中で試行しながら、全県的に広めていくことができれば、奈良県教育の充実のために役立つと考えております。


3 平成28年度の教職員人事異動について
 平成28年4月の人事異動は、無事終了することができました。各市町村教育委員会のご理解とご協力に深く感謝申し上げます。特に昨年度から、新規採用後4年以上の初回異動において、基本的には他の市町村への異動とし、多様な経験を積み重ねてもらうということを実施しております。今回も、対象者の4分の1、23.3%に対して行うことができました。この件については、順調に行われていると感じております。
 それから、日本全体で女性の力をどのように生かしていくかという社会の動きがありますが、県の方でも女性の管理職の方が69名、前年度比11名の増になっており、着実に増えております。こういった数字が増えることも大切ですが、まずは女性が管理職として活躍しやすい環境をどのようにつくっていくのか、実際に現場の先生方の声も聞かせていただきながら、今後取り組んでいきたいという思いをもっております。


4 新人事評価制度について
 平成28年度からスタートしました人事評価制度については、十分にご説明ができておらず、申し訳なく思っております。これは、今まで勤勉手当に反映していたものを昇給にも反映させるという非常に大きな制度改革です。昇給に関係するということは、自分の将来の給料に影響があるということですので、非常に敏感に受け止めていただいていることと思います。まだまだ説明不足の点がありますが、今後、じっくりと説明や協議の機会をもたせていただきたいと思っております。
 基本的には、自己申告による評価と、校務の経験や職務の遂行状況を総合的に評価する総合評価という二つの評価になります。自己申告評価においては、申告が適正なものであるかという確認と修正を管理職が行います。これは、年度ごとの評価で、勤勉手当に反映します。総合評価は、勤務状況と教員として今まで積み重ねてきた経験値による評価とを総合的に行い、昇給に反映させることになります。
 それぞれの評価は絶対評価ですので、これを市町村教育委員会教育長の皆様に相対化していただき、それに基づいて給与や手当に反映させることになります。管理職については、平成29年度からですので、今年度の評価を来年度に反映します。その他教職員については、29年度の評価を30年度に反映していくという制度設計になっています。このことにつきましては、教職員課から詳しく説明がありますが、市町村教育委員会教育長の皆様には、今後、各担当管理主事が直接ご説明に伺う予定になっております。どうぞよろしくお願いいたします。


5 教職員の資質向上に向けて
 教員の資質を向上させるということについては、市町村教育委員会教育長、教育委員の皆様方も一番大事に思っておられると思います。初任者研修を3年間の研修に大きく変更することを考えています。初任者研修は、従来1年目だけの悉皆研修で全ての研修を終えていたのですが、これで足りるのかということについて、非常に疑問に思っておりました。そこで、例えば1年目は教科をベースに行い、2年目、3年目には学級経営をベースに行うなど、研修の在り方を総合的に見直す検討を進めております。
 現在、奈良教育大学と若手教員育成のシステムを研究開発中ですので、その成果もお示しできると思っております。
 また、初任者研修の拠点校指導員制度についても検討しています。例えば、講師経験を経て採用された先生方であれば、採用1年目であっても、これまでの経験からある程度のことはできるのではないかという考え方もあると思います。その一方で、大学を出てすぐの先生方が、小学校で担任をもつというケースがあります。そこで、講師経験のある人に対しては軽減をしながら、大学を出て初めて任用され、小学校で担任をもたれる先生への対応に充てていくというような制度として、今後充実させていこうとしています。今年度は第一歩ですので、そういったことも知っていただきながら、拠点校指導教員と校長先生とで十分話合いをもっていただいて、いい初任者教員になるよう、取組をお願いしたいと思っております。


6 次世代教員養成プログラムの実施について
 次世代教員養成プログラムについてです。私は、小学校の先生が子どもに与える影響は大きいと思っております。先生との出会いが、場合によっては人生を変えることになるかもしれません。奈良県の小学校教員の資質とスキルを向上させるため、現在、現職教員向けにはさまざまな研修を行っておりますが、採用する以前からプログラムを行うことで、より成果を上げることができるのではないかと考えています。
 今、高田高等学校と平城高等学校に教育コースがありますが、本年度の入試より、教育コースの1クラスの入試も特色選抜で行うのではなく一般選抜で行ってまいります。入学後のカリキュラムについては、両校で現在検討を進めております。その結果はまもなく出てまいりますので、中学3年生の子どもたちや市町村教育委員会の皆様方にも情報が伝わるようにいたします。
 これら教育コースの生徒たちを核に、小学校の先生になりたい生徒を2年生の9月頃から集めて、県教委と小学校教員養成を行っている大学とでプログラムをつくり、1年間実施することによって、高校のうちから小学校の教員となるベースをつくっていきたいと考えております。奈良教育大学が中心になりますが、県内に法人があり1種免許取得可能な小学校教員養成を行っている大学は全て参加の意向をいただいております。県内の大学と、教育研究所を中心とした県教委が共同で1年間プログラムを実施します。3時間程度のプログラムを10日間行う予定ですが、高等学校ですと35時間が標準1単位ですので、およそ1単位ほどの授業を1年かけて行うことになります。私立や公立に関わらず、小学校の教員になりたい生徒を集めて、そのようなプログラムを実行していきます。そして、その生徒たちが大学に進学していくときに、今度は大学生に対して第2弾のプログラムを行います。大学生のプログラムの中には、現場でのインターンシップを入れてはどうかということも検討しております。プログラムに参加している生徒たちが大学へ進学した際に、県内小学校でインターンシップを受け入れていただき、その成果を校長先生にも見ていただければと計画を進めております。
 このように次世代の小学校教員を養成するプログラムを現在計画中ですので、皆様方からも、小学校教員の資質向上のためにどのような内容を取り入れれば良いのかというご意見をいただきたいと思っております。

 その他、来年度の入学者選抜に関することでは、いくつかの改革を今進めているところです。例えば、青翔中学校では1クラス募集で、クラス替えがない等の弊害が出てきておりますので、今後2クラスの募集にしていきたいと考えています。奈良情報商業高等学校では商業科を3学科に分けて募集をしておりましたが、中学生には分かりにくいので、くくり募集ということで商業科全体で募集をすることを検討しております。また、五條高等学校賀名生分校では、募集人員は変えませんが、家政科の募集をなくし、農業に一本化することを検討しております。特に、賀名生分校の改革では、地域の農業の人材育成、定住化の方向性を含んだ過疎化への対応等、いろいろな思いをもちながら、現在五條市を中心に考えておられるところです。


7 教科書選定における公正確保の徹底について
 教科書の選定に関する公正確保という観点からの話です。県立高等学校については、校長会を通じて聞き取りを行い、校長としては現在把握していないという状況でした。市町村の方でも、このことについてはある程度足並みをそろえながら進めていただければと思います。


8 奈良県学力・学習状況調査事業の実施
 県の学力・学習状況調査につきまして、4月19日に小学校4年生、中学校1年生を対象に実施をさせていただきました。特に、4年生の子どもたちは3年生から進級したばかりで、こういった試験に慣れていないのでハードであるという声が聞かれるのですが、一方ではある一定の試練を与え、それに耐えることに意義があるとのご意見もあります。私のところに届くのは一部の声かもしれませんので、調査における課題について、お気付きのことがあればお教えいただきたいと思っています。
 また、本年度より教員対象の調査も実施させていただきました。教員の働く時間について、日本の場合、特に中学校で課題があるという調査結果が出ています。そのため、本県でも、教員が多忙感をどの程度感じているのかという調査を行いましたので、分析結果等については、また共有させていただきたいと思います。


9.組体操の安全な実施について
 組体操についての通知を県教育委員会から出させていただきました。春開催の運動会の時期は過ぎましたが、秋開催の学校もあります。
 ピラミッドやタワーでは県内で10件をこえる骨折が報告されています。本当に実施しなければならないのか、本当に実施することがよいのか、そういった観点から通知を出させていただきました。
 やはり、リスクマネジメントも学校長が考えるべき大事な要素です。けがを恐れていたら成り立たない教育活動もあるのではないかという意見があるようですが、あえて高さを競い合うようなピラミッドをすることが本当にいいのかと感じています。基本的にはする必要はないというのが私の考えです。子どもたちに達成感や充実感を与えることは、もっと他にたくさんあるのではないかという思いで、通知を出させていただきました。
 どうぞ、皆様方には趣旨をご理解いただきまして、今後も子どもたちの体力づくりの取組についてよろしくお願いしたいと思います。


10 おわりに
 最後になりますが、やはり、奈良県教育を充実させるためには、市町村教育委員会との信頼関係が一番大事だと思っております。信頼関係を構築するために、県教委として何をすべきか、どういうことを考えていくべきかということを常々考えながら県の教育行政のリーダーとして今後とも頑張っていきたいと思っておりますので、どうか皆様方のご支援をよろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。