ホテイアオイの冬越し

この季節、休耕田や池に枯死してちりぢりになったホテイアオイをみかけます。ホテイアオイは景観形成植物として知られ、県内では、橿原市城殿町の本薬師寺跡周辺で栽培されているものが有名です。また、よくホームセンターで販売されており、金魚の水草として親しんでいる方も多いと思います。しかし、ホテイアオイの見どころは花ばかりではなく、その生き残り戦略にもあります。
ホテイアオイは年中気温が高い南米原産の外来雑草で、低温に弱いのです。日本の冬は寒く、霜に当たると通常は枯れてしまいます。しかし、必ずしもすべて枯れてしまうわけではありません。枯死したホテイアオイの周辺を観察してみると、越冬に成功したホテイアオイが新たに芽をだし、旺盛に生育を始める様子を観察できると思います。熱帯の雑草が、果たしてどうやって日本で越冬しているのでしょうか。
答えは「他のものの下に隠れること」です。越冬できたホテイアオイの越冬場所は、橋の下や葦が繁茂した場所が多いのです。他のものの下に隠れると、夜間の放射冷却が防止され、霜を回避することができます。こうすると、ホテイアオイの体温は枯死するまで低下しなくなり、越冬することができます。
また、隠れる場所がない所で生育したホテイアオイは、お互いに密集しあって、体を覆いあうようにして越冬します。多くの昆虫や動物が寄り集まりお互い暖め合って冬を越すように、ホテイアオイも春夏に比べて冬の方が密集しています。これをホテイアオイ自身が考えて密集しているのかはまだわかっていませんが、越冬するための重要な要素であることには間違いありません。
越冬できれば、春先に種子から発芽している在来の水草に先駆けて栄養や太陽光を吸収し、早くから増殖することができます。寒い冬が来るまでの生育期間も長くなり、よくみかけるホテイアオイだけの群落を形成できます。越冬することは大繁殖するために重要なのです。

hoteiaoi
 ボタンウキクサとの繁殖競争に負けたホテイアオイ(円内)。
 越冬が運命を分ける。

【豆知識】「水草には特定外来生物が多い」
外来生物法では、日本在来の生物や生態系に悪影響を及ぼしたり、人の生命・身体、農林水産業に被害を与えるおそれのある外来生物を、「特定外来生物」に指定しています。特定外来生物に指定されると、飼育、栽培、保管、運搬、輸入などが規制されます。国内の外来生物に対する規制のうち、最も重い規制です。
現在、植物の特定外来生物は13種指定されており、そのうち水辺の植物はボタンウキクサなど9種と非常に多くなっています。この原因として、(1)外来水草は熱帯のものが多く常緑で栄養繁殖(茎から芽を伸ばして新しい個体をつくること)をする、(2)水に流されて生息地を広げることができる、ことが挙げられます。栄養繁殖によって大量に増殖し、洪水などによって流されて広域に拡大するのです。
近年本当に在来の水草を見ることが少なくなってしまいました。外来種の放流は絶対にやめましょう。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。