小ギクのはなし

  小ギクというと、盆や彼岸の墓参りというイメージですが、実は一年中、全国流通しており、日本の切り花生産量の12%を占める最重要品目のひとつです。バラやカーネーションでさえ7%ですので、いかに日本でなじみ深い花か分かると思います。11~5月には、沖縄から全国に出荷されており、春のお彼岸の小ギクは、ほぼ沖縄産と思って間違いありません。一方、5~12月の夏秋期には、奈良や茨城等の近郊産地から出荷されています。
 中でも、奈良県は沖縄県に次いで全国第2位の大産地で、平群町や葛城市で生産されています。5~6月の今から出荷が始まり、12月まで長期連続出荷されています。この長期出荷を、ハウス等の施設栽培ではなく露地栽培で、多品種を組合わせて実現しているのが、本県の大きな特徴です。冬産地の沖縄では少ない品種を電照栽培で長期出荷しており、1戸の農家は数品種しか栽培しません。これに対し、奈良県では1戸の農家が50~100程度、産地全体では200品種以上を栽培しています。
 これらの品種は、開花特性から学問的には秋ギク型、寒ギク型、夏秋ギク型、夏ギク型の4つの品種群に分類され、各々に応じた栽培法が必要です。キクの基本は秋ギク型で、春に植えて秋に日長(1日の昼の長さ)が短くなると花芽ができ、10~11月に咲きます(短日開花性)。寒ギク型は、同じ短日開花性ですが、より低温でも開花できる特徴があり、夏に植えて12月に開花させます。7~9月に咲く夏秋(かしゅう)ギク型は、秋ギクより長い日長でも花芽ができ、真夏でも正常開花できる高温開花性が特徴です。さらにユニークなのは5~7月に咲く夏ギク型で、キク本来の短日開花性を失っているため、秋に植え付けて春に気温が上がるだけで開花する特徴を持っています。奈良県の小ギク農家では、こうした各品種群の栽培特性のひとつひとつを熟知して長期栽培しているのです。
kogiku

【豆知識】「趣ある花の違い注目」
 小ギクは、他の花や葉ものと組合せた「仏花」や、「小ギク(混合)」として売られることが多く、バラやユリのように品種の名前を消費者が目にすることはまれです。しかし、小ギクでも品種名がひとつひとつ付いており、育種から生産、流通までは品種名で取引されています。小ギクの品種は、ほぼ国内で開発されており、その名前には季節感と色をイメージできる粋な名前が付いています。7月に咲く「ほたる」や「小雨」、お盆に咲く「風鈴」や「流星」、秋には「月あかり」や「こがらし」等々。今の時期に流通する小ギクには、赤の「清姫(きよひめ)」、黄の「夏ひかり」、白の「川風」などがあり、じっくり見ると品種ごとに、花数や花びらの形、色合い、葉の形や緑の濃淡など、たくさんの特徴があります。小ギクの花を見つけたら、ぜひ一度、品種ごとに趣ある花の違いに注目してみて下さい。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。