ハダニVSカブリダニ

 奈良県は、関西一のイチゴ収穫量を誇ります。特に、農業研究開発センターが作成した‘古都華’は濃厚な味で人気を博しています。さて、イチゴ栽培において、葉の汁を吸い、最悪の場合には枯れさせる害虫がいます。葉を害するダニ、「ハダニ」です。体長は0.6mm程度の小さな生物ですが、その繁殖力は旺盛なため、大きな問題となっています。イチゴ農家はハダニが発生すると、主に殺虫剤を散布します。しかし、殺虫剤抵抗性が発達したハダニの出現などにより、殺虫剤でハダニを制御することはとても難しくなってきています。そこで、いま奈良県内の農家では、ハダニを食べるダニ、「カブリダニ」をイチゴに放すことによってハダニを制御する技術の導入が進んでいます。カブリダニは、ハダニの成幼虫や卵などを餌として増えていきます。そのため、少し時間はかかりますが、確実にハダニの数を減らすことができます。また、カブリダニは、餌のハダニを追いかけて殺虫剤がかかりにくい葉の隙間にも入っていき、ハダニを食べます。一部のカブリダニは、花粉も食べて生きることができるので、ハダニの再来にも備えられる優れものです。カブリダニは、おがくずなどのクッション剤とともに250mLなどのボトルに入れられ販売されています。イチゴに放す際は、クッション剤ごとイチゴの葉上に振りかけます。カブリダニを放すのは、殺虫剤散布よりもかなり省力的ですので、農家の労働負担を減らすことにもつながります。また、殺虫剤の散布回数の低減にもつながるため、環境への負荷が低減されます。今後、農家の高齢化や農業の大規模化が進む中で、イチゴ栽培で注目されている技術です。現在、農業研究開発センターでは、ハダニの発生時期や発生量など、様々な条件下でもカブリダニによりハダニを制御できる技術の開発に取り組んでいます。
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  ハダニ(左)を食べるカブリダニ(右)。上は拡大写真

【豆知識】「自然界にはハダニがいない?」
 実は森林や公園などでハダニを見かけることはほとんどありません。これは、雨風に打たれて死んでしまったり、自然界にいるカブリダニなどの天敵に食べられることが原因です。ではなぜイチゴ栽培では、ハダニは問題となるのでしょうか。1つ目の理由は、温室内では雨風をしのげるためです。2つ目の理由は、温室内には天敵は入りづらいためです。3つ目の理由は、温室内はハダニが増殖するのに好適な温度であるためです。このため、露地で家庭菜園をしている方は、ハダニの顔を見ずに収穫を迎えられる場合が多いと思います。もしハダニが発生した場合は、家庭菜園でも使いやすい殺虫剤として、デンプンや油状物質などが主成分でハダニやアブラムシ等に効く「気門封鎖剤」(商品名ではありません)があります。これは、ホームセンターなどでも販売されており、天敵への影響も比較的小さいです。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。