海を渡って日本まで ウンカ

 ウンカという虫をご存じでしょうか。体長5mm前後のセミに似た虫で、時おり大発生して稲を吸汁することで、枯らしてしまいます。古くは江戸時代、享保の大飢饉(西暦1732年)の原因となり、被害が大きい地域では稲の収穫量が平年の1割になったと伝えられています。近年では2013年に西日本を中心に大きな被害があり、奈良県でも田んぼに丸い穴があいたような被害「坪枯れ」が生じ、被害が大きい田んぼでは稲をほとんど収穫できませんでした。
 このような被害をもたらすウンカはセジロウンカとトビイロウンカの2種類が知られています。これら2種は毎年、梅雨時期になると突然、田んぼに姿をあらわします。これらのウンカは日本では寒さのため、冬を越すことができません。ではどこからやってくるのでしょうか。
 これらのウンカは遠く東南アジアや中国南部で生まれ、毎年、梅雨前線の南側を中国南部から西日本に向けて吹く強い風(下層ジェット気流)に乗って飛んできます。その移動距離は1000~2000キロにも達します。日本に飛んできたウンカは田んぼで繁殖し、その子供、孫が稲に被害をもたらします。特に梅雨に温帯低気圧が、日本列島沿いに北東の進路を取る年は、ウンカの飛来数が多くなります。その後、夏の気温が高いと増えやすくなり、稲に大きな被害をもたらします。
 ウンカの飛来を予測し、適切な防除を行って被害を防ぐために、奈良県病害虫防除所では情報収集や様々な調査(網で田んぼのウンカを採ったり、光で集めたりしてその数を調べるなど)を行い、その程度に応じて警報や注意報などを発表し、注意を促しています。
 そのほか病害虫防除所では、冬を除く毎月、農作物の重要な害虫や病気などについて、調査に基づく発生予報を発表しています。適切に害虫や病気を防ぐために参考にしてください。病害虫防除所HP:http://www.jppn.ne.jp/nara/

unka
         ウンカによる稲の被害(坪枯れ)

【豆知識】「虫供養」伝統行事に
 ウンカが海外から飛来することが明らかになったのはここ数十年の話です。それ以前はどこからやってくるのか色々な説があり、はっきりしていませんでした。そのため、古く奈良時代までは、これらの被害は神罰によるものとされていました。また鎌倉時代には虫はどこからともなく、自然に発生するものとした文献が残っています。当時の人々は、神の怒りを鎮めるための祈祷やまじないなどを行ったり、松明を灯して虫を村の外れまで送り届けたりしてきました。現在もこれらは「虫供養」や「虫送り(虫追い)」といった形の伝統行事として各地で行われています。奈良県内でもいくつかの地域で行われており、特に天理市山田町で6月半ばに行われる「虫送り」は、市の無形文化財に指定され受け継がれています。一度機会があれば足を運ばれてみてはいかがでしょうか。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
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