農業ハウスの気象災害

  市街地から少し離れると、農業用ハウスをよく見かけます。これは、農作物を雨や風、寒さから守り、生育を促進させるために用いられています。農業用ハウスは、鉄筋やガラスで作られた丈夫な鉄骨ハウスから、細いアーチ状のパイプを組み合わせたものにフィルムやビニルを被せたパイプハウスなどがあります。パイプハウスは、前者に比べて非常に安価であるため、奈良県の農業用ハウスでは最も多く用いられていますが、強度が低いため、しばしば雪や強風による災害に見舞われます。いくら安価と言えども、何棟も災害にあったのでは、経営に大きな打撃となります。そこで、生産者の皆さんは様々な対策をパイプハウスに施しています。
 例えば、パイプハウスは雪の重みによって天井部が下がり、軒部(写真)が折れ曲がることで倒壊することから、この天井部の下がりを防ぐために、ハウス内に丸太や竹の柱を約3m間隔で立てます。また、台風による強風でフィルムが押されると、パイプが曲がってしまうことから、パイプよりも安価なフィルムを破ることで風をにがし、これを防ぎます。しかし、フィルムも決して安いものではないので、大変難しい判断を迫られます。
 これまでの研究で、軒部と軒部をつなぐ直管を設置することにより(写真)、雪の重みによる軒部の折れ曲がりと、強風によるパイプの曲がりのどちらに対しても強度が高まることが分かってきました。この対策は、安価で簡単に設置ができるため、奈良県内で徐々に普及しています。
 爆弾低気圧や勢力の強い台風の上陸など、近年の気象は極端化しているといわれています。奈良県農業研究開発センターでは生産者の皆さんが安心して農産物を生産できるよう、災害に強いパイプハウスの構造や安価で簡易な補強技術について研究開発を進めています。

hausu

【豆知識】
家庭菜園やプランター栽培において、農業用ハウスと同じように植物を守る方法があります。植物は雨に打たれることで病気にかかりやすくなりますが、市販されている簡易な雨よけ資材を利用することで病気の発生を抑えることができます。寒さ対策としては、土の表面にマルチを張ることや、通気性と透光性の高い不織布を植物に被せる方法があります。どちらの対策も保温効果があり、不織布は霜よけ効果も得られます。また、細かい目合いの防虫ネットがかけられた農業用ハウスを見かけますが、これは害虫の侵入を防ぐために行われています。家庭菜園やプランター栽培でも同様にネットで、植物ごとやプランター全体を囲うことで、害虫の侵入を防ぐことができますが、害虫が防虫ネットの上や防虫ネットに触れている葉の上に卵を産み付けることで、幼虫が防虫ネット内に侵入することがよくあるので、防虫ネットの中をよく観察するなど注意が必要です。手軽に行える対策をお試し下さい。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。