小麦の品種のはなし

 いろいろな種類の麺、パン、お菓子やケーキなど小麦粉を使った食品や料理が身近にあふれていますが、小麦の消費量はどれくらいかご存じでしょうか?農林水産省の統計によれば、国民一人あたりの年間消費量は33.0キログラムとなっています。米の消費量が54.6キログラムで年々減少しているのと比べ、ここ数年ほぼ横ばいに推移しています。しかし、自給率は、米(主食用)の100%に対し、小麦は15%しかありません。冷涼で乾燥した気候を好む小麦にとっては日本の気象条件はあまり適していないこともあり、主にアメリカ、カナダやオーストラリアから輸入されています。
 生産量の少ない国内産小麦ですが、どのような用途のものが多く栽培されているのでしょうか。国内産小麦の約9割は、グルテン(小麦に含まれるタンパク質の一種。この質や量が生地の粘り、弾力や伸びに影響し、加工適性が変わってきます。)の量が中程度であるうどん用の品種が生産されています。一方、パン用に適した品種は、これまでは気候条件に恵まれた北海道で主に生産されていました。しかし、地元産小麦を使用したパンに対するパン製造業者や消費者の要望から品種改良が進み、今では関東や西日本での栽培に適したパン用品種が育成され、その生産が広がっています。また、最近では、日本で初めてとなるパスタ用のデュラム小麦品種「セトデュール」が国立研究開発法人の西日本農業研究センター(広島県福山市)で育成されました。病害に対してやや弱いですが、収穫時期に雨が少ない瀬戸内地域での栽培が見込まれています。
 現在、本県で栽培されている品種は日本麺用として育成された「ふくはるか」で、生産された小麦は県内の製粉会社や醤油会社へと流通して行きます。本センターでは、実需者の要望や県内での栽培適性を評価しながら、本県に適した品種の選定を進めていきます。

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     奨励品種決定調査圃(ほ)場の様子

【豆知識】「小麦に望まれる特性」
 小麦は、北海道の春まき小麦を除き、ほとんどが秋には種し6月頃に収穫を迎えます。しかし、収穫時期に雨が続くと作業ができず、品質が悪くなってしまいます。そのため、求められる特性としては、梅雨よりも前に収穫できる早生であることが重要です。また、収量が多く、倒伏を防ぐためにも茎の長さが短く、収穫前に雨に遭ってしまっても品質が著しく低下しないよう発芽しにくいことが望まれます。さらに、製粉する際の歩留まりが良く、できた小麦粉が、使用される用途に適したグルテンの質や量を備えていることも重要です。
 寒い冬の時期は地表面でじっとしている小麦ですが、3月になると急激に伸びはじめ、6月には小麦色になった穂が見られます。県内では桜井市や広陵町などで多く栽培されていますので、「麦秋」の風景を楽しまれてはいかがでしょうか。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
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