柿の新しい加工品

柿は、奈良県の主要農産物で全国2位の生産量があります。秋になると五條・吉野地域を中心に県内各地から出荷が始まります。加工品は、干し柿や柿酢、柿ジャム等が製造販売されていますが、香りが少なく、加熱すると渋くなることがあるため、加工が難しく種類が限られています。そこで、当センターでは、新しい柿加工品として完全甘柿‘富有’を使った糖蜜漬けを開発しました。
製造工程は比較的簡単で、皮をむき種を取り、糖度40度のショ糖液(クエン酸0.3%、アスコルビン酸0.1%を含む)とともにナイロン袋に入れ、中心温度80℃で40分加熱殺菌した後、5℃で1ヶ月程度保存し、糖を浸透させます。渋みは、多くの人が感じず、感じても気にならない程度です。
また、柿糖蜜漬けの利用方法を検討するため、県内の飲食店や和・洋菓子店への聞き取り調査や、実需者が多く集まる首都圏の展示会でアンケート調査を行いました。結果、洋菓子ではクリームやバターと一緒に使うと味や香りが負けてしまうこと、和菓子では通常の製造方法では固すぎて使いづらいとの意見がありました。しかし、鮮やかな柿の色は好評で、サラダのトッピング、肉料理の添え物等として利用できる可能性が見えてきました。さらに、柿糖蜜漬けは、柿らしい食味は少ないものの、食品として食感が良くておいしいという意見が多く、カットしてそのまま食べたいという声も多くありました。
近年、果物を手軽に食べたいという人が増えています。奈良女子大学の学生への調査でも、手を汚さずに食べられるカットフルーツやフルーツ入りヨーグルト等の加工品が好まれることが分かりました。このことから、柿糖蜜漬けでも食べやすく工夫することで、販路の拡大が期待できます。 
県内の柿農家や農産加工業の方と協力し、「奈良のおいしいもの」の新しい食べ方を提案し、全国に発信していきたいと思います。

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【豆知識】「地域資源の活用産業」
現在、柿の糖蜜漬けを製造しているのは、柿等の果樹専業農家の加工グループです。メンバーがそれぞれ生産した柿を持ち寄り、柿の収穫作業が終了したオフシーズンにグループで加工しています。販売する商品として、まるごと1個入りのものだけでなく、小さく切ってゼリーに入れたものが試作され、地元の農産物直売所やイベントでの販売が検討されています。
このように、農林漁業生産と、加工、販売を一体化し、地域資源を活用した新たな産業を創出することを「6次産業化」といいます。奈良県の農業分野では、前述のように農家が生産した農産物を自ら加工・販売まで行う形態のほか、加工のみ専門業者に委託し、できた商品を農家が販売したり、加工業者が農家から農産物を買い取って加工・販売するなど、さまざまな形態があります。こういった取り組みにより農家自身が、雇用と所得を確保し、若者が集落に定住する事例が全国的に見られるようになりました。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。