奈良県の小ギク生産

 小ギクといえばお盆のお墓参りを想像される方が多いのではないでしょうか。しかし、実際には年間を通じて栽培が行われており、全国有数の小ギク産地である平群町などでは、5~12月の長期にわたり出荷されています。
 キクは元々、秋に咲く作物で、夏から秋になり日の長さが短くなり始めると、蕾が形成され、開花する性質がありますが、5~6月にかけて開花する小ギクはこの性質がなくなっています。
 露地栽培で5~6月に出荷する場合、前年の夏の終わりに株元の地際から生えてくる芽を挿し、1ヶ月ほど苗として育てて、10月に定植します。すると、1月頃に新しい芽が地中から出てくるので、残っている前年の古い茎を取り除きます。新芽が伸びてきた4月頃に、茎の本数を株あたり5~6本に整理します。こうした栽培管理を行うことで、5~6月に開花する小ギクが出荷できます。
  しかし小ギクにとっては、春先はまだ気温が低いので、茎の伸びがあまりよくありません。このため、夏の小ギクに比べて梅雨入りの直前に咲く小ギクは切り花にしたときに茎の長さが短い傾向があり、買い手が求める長さを満たすものが少ないという課題があります。
 そこで農業研究開発センターでは、この時期に開花する小ギクの切り花の長さが確保できるように、露地の低温下でも茎が十分に伸びる新しい小ギク品種の育成に取り組んできました。そして既存の品種同士の掛け合わせから、5年間に及ぶ選抜を行い、本年3月に2つの新品種候補「春日Y1(春日の光)」と「春日W1(春日の泉)」を品種登録出願しました。これらの品種の活用により、奈良県産小ギクが少ない5~6月にも十分な長さをもつ切り花を出荷できるようになり、この時期における奈良県の小ギク市場シェア拡大と生産者の経営安定、規模拡大に繋がることを期待しています。

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品種登録出願した新品種候補「春日Y1(春日の光)」(左)と
「春日W1(春日の泉)」 

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 LEDによるキクの盆電照


【豆知識】「電照栽培で開花調整」
 年間で最も需要が多いお盆や彼岸に確実に出荷できるように、夏に咲く小ギクの栽培では電灯を用いて開花時期を人為的に調整する技術が普及しています。これを電照栽培といいます。夏から秋にかけて咲く小ギクの中には、日の出ている時間が、一定の長さより短くならないと蕾がつきにくい品種が多数存在します。この性質を逆手にとって夜間に電灯で光をあてることで、日の出ている時間を長くし、蕾の形成を抑えることができます。これによりお盆の需要の多い時期より早く開花してしまうことを防ぐことができます。そして出荷時期に合わせて消灯しておくことで、タイミングよく開花させることができます。
 最近では電球の代わりに、より効果が高く、寿命の長い赤色LEDを用いる事例も見られます。キクを栽培している畑で夜間に明かりがついていら、このキクの電照栽培を思い出してみてください。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。