ジャガイモの普及

 ジャガイモは、南米のアンデス山脈が原産地といわれています。高地の厳しい寒さにも耐え、比較的やせた土地でも育つため、世界中で栽培され、重要な食料となっています。
 ヨーロッパに伝わったのは16世紀頃で、インカ帝国から持ち込まれたのが始まりとされています。当初は、聖書にも出てこない、土の中に実がなる珍奇な植物として観賞用に栽培されることが多かったのですが、食料用として早期に普及した国は、当時食料飢餓に苦しむドイツでした。国王フリードリッヒが自らジャガイモ栽培を奨励したとされています。一方、フランスでの食料用としてのジャガイモの普及はやや遅く、18世紀半ばでした。ドイツと同様に食料飢餓に陥った際に急速に広がりました。その普及に最も貢献したのは、薬学者のパルマンティエ男爵でした。彼は、国王ルイ16世に「今のフランスを救えるのはジャガイモしかない」と進言しました。彼は戦争でドイツの捕虜になり、ジャガイモを食べ、その価値を知っていたのです。ジャガイモを早く、広く普及させるために、彼は収穫期が近づいたイモ畑に「これは、王様が食べる、とても美味しく栄養のあるイモである。盗んだ者は厳罰に処する。」という看板を立てさせ、昼間だけ見張りを厳重にしておきました。盗んではいけないといわれると盗みたくなるのが世の常。男爵の狙いどおり、夜の間に盗まれたジャガイモは庶民の間で広く作られていきました。また、男爵はジャガイモの花束を王妃マリー・アントワネットに献上し、帽子や髪に花を飾って晩餐会へ出てもらいました。当時のファッションリーダーである王妃を真似て、多くの女性がジャガイモの花を身につけたことは言うまでもありません。このように、ジャガイモの普及に努めたパルマンティエ男爵の功績を称えて、フランス料理では「ジャガイモ添え」の意味で、彼の名「パルマンティエ」が使われています。

jagaimo

 ジャガイモの花。花の色は品種によって、白、紫、赤紫とさまざま

【豆知識】「低温保存で甘みが増加」
 越冬ジャガイモ、氷室貯蔵ジャガイモなどの言葉を聞いたことはありませんか。秋作のジャガイモを氷室などの低温保冷庫で貯蔵して甘くなったジャガイモのことです。ジャガイモは、2~4℃の低温、80~90%の湿度で1ヶ月以上貯蔵すると、糖度が増加することが知られています。これは「低温糖化」と呼ばれる現象で、低温で保存した際に、自らのデンプンを分解して糖に変え、凍結を防ぐ自己防衛機能と考えられています。
家庭でも、ポリ袋にぬれたタオルを敷き、そこに新聞紙で包んだジャガイモを入れ、袋の口を縛り、冷蔵庫のチルド室に入れておくと、2週間から1ヶ月で甘味の増したジャガイモになります。ただし、この甘くなったジャガイモは、揚げると糖分が焦げて黒くなってしまうので、茹でたり蒸したりして食べてください。また、甘くなったジャガイモを常温に放置すると、糖分が低下していきます。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
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