マスカットの話

 九月に入り、ブドウの収穫が最盛期を迎えています。スーパーなどの果物コーナーにはさまざまなブドウが並んでいますが、その中の白色(黄緑色)のブドウを見て、「マスカット」という名前を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
 「マスカット」と呼ばれるブドウはいくつかありますが、その元祖ともいえる品種が「マスカット・オブ・アレキサンドリア」です。原産地は北アフリカ(エジプト)とされ、紀元前から栽培が行われていた品種です。日本には明治時代に伝えられ、以後百年以上にわたって岡山県を中心に栽培されています。上品で濃厚な味と香りが多くの人を魅了し、高級ブドウとしての地位を確立しました。
 そんな「マスカット・オブ・アレキサンドリア」ですが、原産地に比べて高温多湿である日本では栽培が難しいという欠点を抱えています。そのため、戦前から品種改良が行われ、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」の血を引く「ネオ・マスカット」や「マスカット・ベーリーA」、そして「シャインマスカット」などの優良品種が数多く生み出されました。
 中でも、平成十八年に品種登録された新しい品種「シャインマスカット」は病気に強く、栽培しやすいマスカットとして注目を集めています。またこの品種は種なし栽培が容易であり、さらに皮が薄いため、皮ごと食べることができるという特長を持っています。このような「食べやすさ」が味や香りとともに消費者の人気を博し、全国的に「シャインマスカット」の栽培が増えました。そのため、最近では最も多く出回る時期(八月~九月頃)には専門店やデパートのみならず、街中のスーパーでも見かける機会が多くなりました。
 巷にはマスカット味のお菓子や飲み物があふれていますが、この秋は一度、本物のマスカットを味わってみてはいかがでしょうか。

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【豆知識】「皮の色で味が分かる」
 ブドウは皮の色によって、「巨峰」などの「黒系」、「デラウエア」などの「赤系」、および「シャインマスカット」などの「白系」の三種類に分類されます。このうち、「黒系」と「赤系」の品種は、色素(アントシアニン)が蓄積することにより着色が起こります。一方、「白系」の品種ではアントシアニンが作られず、果皮は緑色から黄色のまま収穫期を迎えます。
 「黒系」や「赤系」のブドウでは、品種と栽培地が同じであれば、色が濃いものほどおいしいことがほとんどです。これは、ブドウの栽培管理が適切に行われたものほど、着色が優れる傾向があるためです。
 一方「白系」のブドウでは、緑色の濃いものほどおいしい、というわけではありません。そのかわり、果皮色によって熟度を知ることができます。例えば「シャインマスカット」の場合、果皮色が黄色に近いほど熟れていて甘く、緑色が濃いほどさわやかでマスカット香が強いという傾向があります。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
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