お茶摘みの変遷

 茶の収穫、お茶摘みと聞けば、手で茶葉を摘む光景を思い浮かべる方が多いかと思います。実際、昔はお茶摘みといえばすべて手摘みで、原料となる新芽(写真)を1本ずつ摘んでいましたが、この方法では1日に1人10~50kgしか摘めません。そこで収穫能率向上を目指し、様々な方法が考案されてきました。
 明治期に考案され、昭和初期に普及したのが茶刈り鋏です。剪定鋏に袋を取り付けたもので、刈った芽が袋の中に落ちてたまる構造になっており、1日で1人100~150kgのお茶を摘むことができました。
 この鋏摘みと手摘みの共存がしばらく続きましたが、戦後に機械化が検討されるようになりました。まず、小型のモーターやエンジンで動く携帯型摘採機が登場しましたが、重さが問題となり、軽量化が進められました。次に昭和40年、さらに大きく、摘採幅を広くした可搬型摘採機(写真)が登場しました。この機械では、2人の作業者が茶の木の畝を挟んで両側から機械を持ち上げ、畝上をスライドさせていきます。バリカン状の刃が刈ったお茶の芽を、送風機で吹き飛ばし、後ろに装着した袋に蓄積します。1時間に250~370kgの芽を摘むことができ、小回りが利く、トラックへの積み込みが容易、等の理由から、現在、最も普及しています。
 昭和45年には、可搬型摘採機の欠点である、作業に2人以上が必要、重い機械を支える必要があるという点を克服するため、畝をまたいで走行する乗用型摘採機(写真)が実用化されました。摘む仕組みは可搬型摘採機と同じで、作業者1人が機械に乗って操縦します。1時間に500~1500kgの収穫が可能ですが、急な傾斜地等では使用できません。また、摘採機にはこの他にレール型や自走型もあります。
 現在は機械摘みを主流としつつ、手摘みや鋏摘みも行われています。様々な試行錯誤の結果、状況に応じた収穫法を選択できるようになったのです。

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 写真(1)

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 写真(2)

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 写真(3)

【豆知識】「手摘みで高品質茶」
 手摘みは新芽を選ぶので不要部の混入が少ないため、高品質のお茶ができ、主に高級茶の生産で行われます。その方法も様々で、一般的に行われるのは折り摘み、かき摘み、こき摘みです。
・折り摘み:親指と人差し指で芽をはさみ、1芽ごとに折り曲げるようにして折り取る方法です。最も丁寧な方法で、摘み取った芽の品質も最も良くなります。能率は1日、1人で10kg内外です。
・かき摘み:手の使い方は折り摘みと同じですが、芽を上に引っ張るようにして摘みます。少し固くなった芽を摘むのに適します。能率は1日、1人で15~20kgです。
・こき摘み:新芽の下部を親指と人差し指で挟んでこき上げ、葉と先端の柔らかい芽を摘みます。生長してやや固くなった芽を摘む方法で、1日、1人で50kg摘むことができます。
 お茶摘み体験などで実際にお茶の手摘みを体験することも可能ですので、興味のある方は参加されてみてはいかがでしょうか。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
※過去に掲載されたトピックスは時間が経過し、現下と異なる点もございますのでご了承下さい。