薬草としての芍薬

 「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」。女性の美しさを表現する言葉として使われることからも、シャクヤクと聞けば、やはり初夏を彩る美しい花を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?シャクヤクはボタン科ボタン属に属する植物で、日本にも2種が自生していますが、一般的には、中国北部からシベリアにかけて分布しているPaeonia lactifloraと、それを改良した園芸品種を指します。美しい花の印象が強いですが、もともとは奈良時代に薬用植物として中国から日本に渡ってきたもので、現在でも、根を乾燥させたものが生薬“芍薬”として広く利用されています。漢方では、“芍薬”は鎮静・鎮痛作用や抗炎症作用のために用いられ、 “葛根湯”を始め、多くの漢方薬に配合されています。その消費量は医薬品に使用される生薬の中で4番目に多く、シャクヤクは最も身近な薬用植物の1つと言えるでしょう。
 現在では、国内で消費される生薬としての“芍薬”の大半は中国からの輸入品で占められていますが、かつては国内でも多く栽培され、特に大和地方で産出されるシャクヤクは“大和芍薬”として珍重されてきました。遅くとも江戸時代後期には、現在の吉野郡や宇陀郡が薬用シャクヤクの産地として確立していたようです。また、県内で古くから伝承されてきた“梵天”(ぼんてん)は、現在でも代表的な薬用品種として知られています。
 残念ながら、シャクヤクは植え付けから収穫までに4年間を要し、収穫作業に多大な労力がかかることから、現在では県内の栽培面積は約2haのみにとどまっています。このような状況を受け、農業研究開発センターでは、ヤマトトウキやジオウなど、同じく“大和物”として珍重されてきた薬用作物と組み合わせ、地域ブランドを生かした新たな薬用作物栽培の経営モデルの構築を目指し、栽培の研究に取り組んでいます。

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            大和芍薬の白い花

【豆知識】
 シャクヤクは通常、“株分け”によって増やします。9月下旬から10月上旬に株を掘り上げ、根を切り落として、芽が3~5個つくように切り分けます。堆肥を施して深く耕し、芽の深さが5cm程度となるように植穴を掘って、芽を上にして植え付けましょう。鉢栽培では大きめの鉢を使用し、赤玉土と腐葉土を3時2分の割合で配合した培養土などに植えると良いでしょう。9~10月にかけて盛んに根が発生しますので、この時期を逃さず植え付けることが重要です。翌春3月頃には芽が地表に姿を現し、5~6月に開花しますが、この時期は蕾に病気が発生しやすく、花が咲く寸前に枯れてしまう場合がありますので、芽が出た直後から開花までの間に、2回程度殺菌剤で消毒することをおすすめします。また、種子ができると株が弱りますので、花が枯れたら花首から切り取りましょう。一度植えれば数年間は植え替える必要はありませんので、是非、挑戦してみて下さい。



奈良新聞で第1日曜日に連載中の「農を楽しむ」に掲載されたものです。
(平成20年まで「みどりのミニ百科」)
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